『シルバーバーチの霊訓』6巻 5章 老スピリチュアリストとの対話

『シルバーバーチの霊訓⑥』
【英国のみならず広く海外でも活躍している古くからのスピリチュアリスト(※)が招待されシルバーバーチは「霊的知識に早くから馴染まれ、その道を一途に歩まれ、今や多くの啓示を授かる段階まで到達された人」として丁重にお迎えした(※名前は紹介されていない)―】
『シルバーバーチの霊訓⑥』
【―(推測する手掛りも見当らない。霊言集にはこのように名前を明かしてもよさそうなのに、と思えるケースがよくあるが、多分、公表は控えて欲しいとの本人の要望があるのであろう。これもシルバーバーチの影響かも知れない―訳者)】
『シルバーバーチの霊訓⑥』
思えば長い道のりでした。人生の節目が画期的な出来事によって織成されております。しかしそれも全て一つの大きな計画のもとに愛によって導かれている事をあなたはご存知です。暗い影のように思えた出来事も今から思えば計画の推進に不可欠の要素であった事が分ります。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
あなたがご自分の責務を果たす事ができたのはあなた自身の霊の感じる衝動に暗黙のうちに従っておられたからです。これより先、その肉体を大地へお返しになられるまでにあなたに課せられた仕事は、とても意義深いものです。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
これまで一つ一つの段階を追って多くの啓示に接してこられましたが、これから先さらに多くの啓示をお受けになられます。これまではその幾つかをおぼろげに垣間見てこられたのであり、光明の全て、啓示の全てが授けられた訳ではありません。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
それを手にされるにはゆっくりとした発達と霊的進化が必要です。私の言わんとするところがお分りでしょうか。【よく分ります―】これは一体どういう目的があっての事なのか―あなたはよくそう自問してこられましたね。【目的がある事は感じ取れるのです―】
『シルバーバーチの霊訓⑥』
【―目的がある事自体を疑った事はありません。ただ自分の歩んでいる道の本の先だけでいいから、それを照らし出してくれる光が欲しいのです―】あなたは“大人の霊”です。地上へ来られたのはこの度が最初ではありません。それは分っておられますか。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
【その事についてはある種の自覚をもっております。ただ今ここで触れるつもりはありませんが、それとは別の考えがあって、いつもそれとの葛藤が生じます―】私にはその葛藤がよく理解できます。別に難しい問題ではありません。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
その肉体を通して働いている意識と、あなた本来の自我であるより大きな側面の意識との間の葛藤です。有象無象のこの世的雑念から離れて霊の力に満たされると、魂が本来の意識を取戻して日常の生活において五感の水際に打寄せてしきりに存在を認めて欲しがっていた、―
『シルバーバーチの霊訓⑥』
―より大きな自我との接触が得られます。先程おっしゃった目的の事ですが実は霊の世界から地上へ引返し地上人類のために献身している霊の大軍を鼓舞し動かしている壮大な目的があるのです。無知の海に知識を投入する事、それが目的です。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
暗闇に迷う魂のために灯火を掲げ、道を見失える人々、悩める人々、安らぎを求める人々に安息の港、聖なる逃避所の存在を教えてあげる事です。私たちを一つに団結させている大いなる目的です。宗教、民族、国家、その他ありとあらゆる相違を超越した大目的なのです。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
その目的の中にあってあなたもあなたなりの役目を担っておられます。そしてこれまで多くの魂の力になってこられました。【ご説明頂いて得心がいきました。お礼申上げます―】私たちがいつも直面させられる問題が二つあります。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
一つは惰眠をむさぼっている魂に目を覚まさせ、地上で為すべき仕事は地上で済ませるように指導する事。もう一つは目覚めてくれたのは良いとして、まずは自分自身の修養を始めなければならないのに、それを忘れて心霊的な活動に夢中になる人間を抑える事です。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
神は決してお急ぎになりません。宇宙は決して消滅してしまう事はありません。法則も決して変る事はありません。じっくりと構え、これまでに啓示された事は、これからも啓示されていく事があるとの証明として受止め、―
『シルバーバーチの霊訓⑥』
―自分を導いてくれている愛の力は自分が精一杯の努力を怠りさえしなければ決して自分を見捨てる事はないとの信念に燃えなくてはいけません。【実はこの老スピリチュアリストは今回の交霊会に備えて三つの質問を用意していた。その問答を紹介しておく―】
『シルバーバーチの霊訓⑥』
【私の信じるところによれば人間は宇宙の創造主である全能の神の最高傑作であり、形態ならびに器官の組織において大宇宙のミクロ的表現であり、各個が完全な組織を具え特殊な変異は生まれません―】
『シルバーバーチの霊訓⑥』
【―しかし一体その各個の明確な個性、顔つきの違い、表情の違い、性向の違い、その他、知性、身振り、声、態度、、才能の差異も含めた一人一人の一見して区別できる個性を決定づける要因は何なのでしょうか―】これは大変な問題ですね。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
まず物質と霊、物質と精神とを混同なさらないでください。人間は宇宙の自然法則に従って生きている三位一体の存在です。肉体は物的法則に従い、精神は精神的法則に従い、霊は霊的法則に従っており、この三者が互いに協調し合っております。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
かくして法則の内側に法則がある事になり、時には見た目に矛盾しているかに思えても、その謎を解くカギさえ手にすれば本質的には何の矛盾もない事が分ります。法則の裏側に法則があると同時に一個の人間の様々な側面が交錯し融合し合って、―
『シルバーバーチの霊訓⑥』
―常に精神的・霊的・物的の三種のエネルギーの相互作用が営まれております。そこには三者の明確な区別はなくなっております。肉体は遺伝的な生理的法則に従っておりますし、精神は霊の表現ですが肉体と脳と五感によって規制されております。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
つまり霊の物質界での表現は、それを表現する物質によって制約を受けるという事です。かくしてそこに無数の変化と組合せが生じます。霊は肉体に影響を及ぼし、肉体もまた霊に影響を及ぼすからです。これでお分り頂けるでしょうか。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
【だいぶ分ってきました。これからの勉強に大いに役立つ事と思います。では次の質問に移らせて頂きます。人間はその始源、全生命の根源から生まれてくるのですが、その根元からどういう過程を経てこの最低次元の物質界へ下降し、―】
『シルバーバーチの霊訓⑥』
【―物的身体から分離した後(死後)今度はどういう段階を経て向上し最後に“無限なる存在”と再融合するのか、そのへんのところをお教え頂けませんか―】これもまた大きな問題ですね。でもこれは説明が困難です。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
霊的生命の究極の問題を物的問題の理解のための言語で説明する事はとてもできません。霊的生命の無辺性を完全に説き明かせる言語は存在しません。ただ単に、人間は霊である、ただし大霊は人間ではない、という表現しかできません。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
大霊とは全存在の究極の始源です。万物の大原因であり、大建築家であり、王の中の王です。霊とは生命であり、生命とは霊です。霊として人間は始めも終りもなく存在しています。それが個体としての存在を得るのは、地上に限って言えば母胎に宿った時です。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
物的身体は霊に固体としての存在を与えるための道具であり、地上生活の目的はその個性を発現させる事にあります。霊の世界への誕生である死は、その個性をもつ霊が巡礼の旅の第二段階を迎えるための門出です。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
つまり霊の内部に宿る全資質を発達、促進、開発させ、完成させ、全存在の始源により一層近づくという事です。人間は霊である以上、潜在的には神と同じく完全です。しかし私は人間は神の生命の中に吸収されてしまうという意味での再融合の時期が到来するとは考えません。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
神が無限である如く(生命の旅も)発達と完全へ向けての無限の過程であると主張する者です。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
【よく分ります。お礼申上げます。次に三つ目の質問ですが―今おっしゃられた事がある程度まで説明してくださっておりますが―人間は個霊として機械的に無限に再生を繰返す宿命にあると説く輪廻転生論者がいますが、これは事実でしょうか―】
『シルバーバーチの霊訓⑥』
【―もしそうでないとすれば最低界である地上へ降りてくるまでに体験した地上以外での複数の前生で蓄積した個性や特質が、今度は死後、向上して行く過程を促進もし停滞もさせるという事になるのでしょうか。私の言わんとしている事がお分り頂けますでしょうか―】
『シルバーバーチの霊訓⑥』
こうした存在の深奥に触れた問題を僅かな言葉でお答するのは容易な事ではありませんが、まず正直に申して、その輪廻転生論者がどういう事を主張しているのか私は知りません。が私個人として言わせて頂けば―絶対性を主張する資格は無いからこういう言い方をするのですが―
『シルバーバーチの霊訓⑥』
再生というものが事実である事は私も認めます。それに反論する人たちと議論するつもりはありません。理屈でなく私は現実に再生してきた人物を大勢知っているのです。どうしてもそうしなければならない目的があって生れ変るのです。預けた質を取戻しに行くのです。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
ただし再生するのは同じ個体の別の側面です。同じ人物とは申しておりません。一個の人間は氷山のようなものだと思ってください。海面上に顔を出しているのは全体のほんの一部です。大部分は海中にあります。地上で意識的生活を送っているのはその海面上の部分だけです。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
死後再び生まれてきた時は別の部分が海面上に顔を出します。潜在的自我の別の側面です。二人の人物となりますが、実際は一つの個体の二つの側面という事です。
『シルバーバーチの霊訓⑥』
霊界で向上進化を続けると、潜在的自我が常時発揮されるようになっていきます。再生問題を物質の目で理解しようとしたり判断しようとなさってはいけません。霊的知識の理解から生まれる叡智の目で洞察してください。そうすれば得心がいきます。

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