■霊界通信 イエスの少年時代 貧窮の中の小さな王者 【35 自然を我が家に】

「イエスの少年時代」より→「初めのうちは雨露をしのぐ納屋も全く無い所で、星の真下でイエスは眠っていた。真暗闇の中でたった一人で居ても彼は怖くなかった。蛍がイエスの頭上でダンスを踊っていた。コウモリが羽をばたつかせながら飛回り、哀れな鳴声を立てながら藪から藪へと渡って行った」
「イエスの少年時代」より→「時折、動物たちが枝の間をざわつかせて歩き、目を覚ます事もあった。初夏の夜は風も無く平和な空気が大地や星空を覆っていた。イエスは急いでオリーブ畑のある険しい坂道を駆け上り、農家が点々と並んでいる地域から離れた荒野へ出てきた」
「イエスの少年時代」より→「彼はまだ薄暗いオークの森の中へ入っていった。突然彼は立ち止まった。ジャッカルの咆える声を耳にしたからである。そのうちに鳥たちが羽をばたつかせ、あたり一面を照らしていた月も雲に覆われて真暗になってしまった。その夜はいつもの緊張感が緩んでいた」
「イエスの少年時代」より→「知恵の面では豊かでも、賢い少年はすっかり子供に戻ってしまい、すすり泣きをしながら暗い木立の中でうろうろしていた。彼はじっと息を殺しながら恐怖におびえ、葉の生い茂った小枝を掴み縮こまっていた」
「イエスの少年時代」より→「再びジャッカルが咆え出すと今度は鳥の鳴声は止まり、全ての生き物も鳴りを潜めてしまった。イエスは絶望しながら細々と口を動かした。<天に在すお父様、悪魔から私をお救い下さい。今夜のような恐ろしい夜から私をお守り下さい>」
「イエスの少年時代」より→「暫くして心地よい一条の光が差し込んできた。遠くで輝いていた古参の星々は地上に沢山の光を撒き散らし、地上のもやを吹き飛ばし、まるで沢山のろうそくの火が灯っている様に荒野を明るく照らしていた。イエスは立ち上がり、額の汗を拭い感謝の言葉を口ずさんだ」
「イエスの少年時代」より→「彼の体からは震えがとまり背筋を伸ばす事ができた。再び賢さが舞い戻った。棒を使いながら歩けそうな道を探し、ようやくの事で林の中の空き地に辿り着いた。枝の間に寝られそうな場所を見つけ、そこに葉をもぎ取ってきては積み重ね、恰好なねぐらを作った」
「イエスの少年時代」より→「木の幹がとても大きいので彼はゆったりと寝転んで休む事ができた。もうジャッカルや狼は怖くなかった。彼はぐっすり眠った。夜明けという“お喋り屋”が眠っている少年の魂を揺さぶった。イエスはゆっくりと目を覚まし辺りを見回すと、何と一つの小屋が目に入った」
「イエスの少年時代」より→「野獣や悪魔の恐怖は早朝の美しい光によって消えていった。あたり一面がパラダイスのように思われた。はしゃぎ回る鳥のさえずりも加わって暫しの間夢心地になっていた。孤独な生活ほど此の世で素晴らしいものはないと思った」

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