『ベールの彼方の生活④』【2 先発隊の到着】【1919年3月7日 金曜日】十重二十重と上方へ延びている天界の界層を見上げつつ、吾々は今や遅しと(キリストの降臨を)お待ちしておりました。その天界の連なる様子はあたかも巨大なシルクのカーペットが垂れ広がっているごとくで、→
『ベールの彼方の生活④』→全体にプリーツ(ひだ)とフラウンス(ひだべり飾り)が施された様子は天界の陽光を浴びてプリズムのごとく輝くカスケード(階段状の滝)を思わせます。プリーツの1つ1つが界層であり、フラウンスの1つ1つが境界域であり、それが上下の2つの界をつなぎ、→
『ベールの彼方の生活④』→それぞれの特色ある色彩を1つに融合させておりました。その上方からきらめく波がその巨大なマントを洗うように落ちてきます。色彩が天上的光輝を受けて、あたかも宝石のごとくきらめきます。その宝石の1つ1つが天使であり、それぞれに天上的光輝の美しさを一身に受け、→
『ベールの彼方の生活④』→そして反射しているのです。そう見ているうちに、吾々の視力の届く限りの1番高い位置の色彩がゆっくりと変化し始めました。本来の色彩をとどめつつも別の要素、新たなきらめきがあふれております。それを見て吾々はキリストならびに従者の一行がようやく吾々の→
『ベールの彼方の生活④』→視界の範囲まで降下してこられた事を知りました。シルクのプリーツの1つがすぐ下のプリーツへ重なり、あたかも次のプリーツに口づけし、そのプリーツが同じように頭を垂れて頬を次のプリーツの肩にそっと触れていくのにも似た光景は、何とも言えない美しさでした。
『ベールの彼方の生活④』以上が吾々が見たキリスト降臨の最初の様子です。吾々には突き透せない光輝の中から今やっとお出ましになり、一歩一歩地球へ近づきつつもなおその間に広大な距離を控え、各界にその霊力を放散しつつ降りて来られるようでした。流れ落ちる光の波はついに吾々の界より→
『ベールの彼方の生活④』→2、3手前の界層の境界域に打ち寄せてまいりました。そこまで来てさらに一段と理解がいきました。吾々が見ているのはキリストの近衛兵の大連隊が光輝を発しつつ前進してくる様子だったのです。しかしキリストのお姿はまだ見えませんでした。
『ベールの彼方の生活④』その途方もない霊力と栄光の顕現にただただ感嘆と高揚にしばし浸っているうちに、今度は吾々自身の内部から、愛と慈悲の念と今まさに始まらんとしている大事業に全力を投入しようとの決意の激発による魂の興奮を覚え始めました。それは同時にいよいよキリストが近くまで→
『ベールの彼方の生活④』→お出でになられた事を告げるものでした。いよいよお出でになられた時の様子、さらには吾々の界を通過して下界へ降りて行かれた時の様子それはとても言葉では尽くせません。あまりに荘厳すぎるのです。が、私にできる限り何とか表現してみましょう。
『ベールの彼方の生活④』魂の興奮は次第に度合を増し、吾々はお出ましの瞬間を見届けんものと、身を乗り出し首を伸ばして見つめました。まず目に入ったのは側近の随行者の先遣隊でした。その一行は吾々にお迎えの準備を促す意味がありました。と言うのは、この度のお出ましはこれまで私が→
『ベールの彼方の生活④』→たびたび叙述した顕現とは異なるのです。大事業の完遂のために幾千万とも知れぬ大軍を率いて、その本来の威力と栄光のままにお出ましになられるのです。吾々もそのご威光を少しでも多く摂取する必要があり、それにはゆっくりとした過程で順応しなければなりません。
『ベールの彼方の生活④』そこでまず先発隊が派遣され、道中、必要とみた者には叡智を授け、ある者には祝福を与え、またある者には安らぎの口づけをするのです。いよいよその一行が悠揚迫らぬ態度で吾々のところまで来られました。いずれ劣らぬ尊い霊格を具えられた方ばかりです。
『ベールの彼方の生活④』上空を飛翔される方々と吾々の間を通り抜けて行かれる方々とがありました。そして吾々の誰かに目が行き、一瞬のうちにその足らざるところを察知して、必要なものを授け、そして先を急がれました。上空を行かれる方から指示が出される事もありました。
『ベールの彼方の生活④』全体が協調的態勢で行動し、それが吾々にとって大きな教訓となりました。【あなたご自身は何かありましたか。】その一行の中には女性が混じっておりました。それは吾々の霊団も同じです。地上の戦争にも女性が派遣されるでしょう。吾々も女性ならではの救助の仕事のために→
『ベールの彼方の生活④』→女性を引き連れておりました。その時私は仲間から離れて後方にいました。というのは、従者の一行に話しかけたい者が大勢の仲間とともに前の方へ出て来たからです。するとその私のところへ一対の男女が近づいて来られ、にっこりと微笑まれて双方が私の手を片方ずつ→
『ベールの彼方の生活④』→握られました。男性の方は私よりはるかに体格があり、女性の方は男性より少し小柄でした。いずれ劣らぬ端整な容姿と威厳を具えておられますが、そうした従者のいずれもがそうであるように、素朴な謙虚さと愛を感じさせました。男性の方はもう一方の手を私の肩に置いて→
『ベールの彼方の生活④』→こう言われるのです― “アーネル殿、貴殿の事を吾々2人はよく存じ上げております。吾々は間断なく生じる仕事においていつも互いの資質を出し合って協力し合っている間柄です。実はこの度この界を通り過ぎる事になって2人して貴殿をお探ししておりました。”→
『ベールの彼方の生活④』→“このご婦人から貴殿に申し上げたい事があるようです。かねてよりその事を胸に秘めて機会をうかがっておられました。”さてその婦人は実にお美しい方で、男性の光輝と相まった眩しさに私はただただ狼狽するばかりで黙って見回すしか為す術がありません。
『ベールの彼方の生活④』すると婦人はその握りしめていた手をさらに強く握られながら幾分高く持ち上げられました。続いて婦人の美しい頭にのっていた冠が私の目の前に下りて来ました。私の手に口づけをされたのです。そしてしばしばその態勢を保たれ、私は婦人のしなやかな茶色がかった髪に→
『ベールの彼方の生活④』→目を落としました。まん中で分けられた髪が左右に垂れ、黄金のヘアバンドを付けておられました。私は一言も口が利けませんでした。高揚性と至純な聖(きよ)さに溢れた喜びが私を圧倒してしまったのです。それはとても筆舌に尽くせるものではありません。
『ベールの彼方の生活④』それから私はおもむろに男性の方へ目をやって私の戸惑いの気持を訴えました。すると婦人がゆっくりと頭を上げ私の顔を見つめられ、それと時を同じくして男性の方がこう言われたのです― “アーネル殿、このご婦人は例の少女ミランヌの祖母に当たられる方です。”→
『ベールの彼方の生活④』→そう言われて婦人の方へ目を向けると、婦人はにっこりとされてこう言われたのです。「お礼を申し上げます、アーネル様。あなた様は私が遠く離れ過ぎているために出来なかった事をして下さいました。実はその子が窮地におかれているのを見て私はあなたへ向けて」→
『ベールの彼方の生活④』→「送念いたしました。あなたは私の願いに敏感に反応して下さいました。間もなくその子も自分からお礼を申し上げに参る事でしょうが、私から一言お礼をと思いまして…」そう言って私の額に口づけをされ、優しく私の身体をご自分のお身体の方に引き寄せられました。
『ベールの彼方の生活④』それからお2人そろって笑顔でその場を立ち去られました。その時の強烈な印象はその後いささかも消えやらず、霊的には常に接触が取れているように思います。今もそれを感じます。貴殿はミランヌなる少女が何者であろうかと思っておられる。実は私もその時そう思ったのです。
『ベールの彼方の生活④』最もその少女との係わり合いについてはよく覚えております。古い話ではありません。ある時仕事をしていると、貴殿も体験があると思いますが、誰かが自分に注意を向けているような感じがしてふと仕事の手を休めました。そしてじっと受身の気持でいると、声ではなくて、→
『ベールの彼方の生活④』→ある種の衝動を覚え、すぐさまそれに従いました。私は急いで地上へ向かいました。たどり着くとまたまた外部からの力で、今まさに地上を去って霊の世界へ入ろうとしている若い女性のところへ一直線に導かれていきました。最初は何のためなのかよく分かりませんでした。
『ベールの彼方の生活④』ただそこに臨終を迎えた人体が横たわっているというだけです。が、間もなく分かりました。すぐ脇に男の霊が立っていて、その女性の霊が肉体から離れるのを待ちかまえております。その男こそ地上でずっと彼女に災いをもたらしてきた霊で、彼女が肉体から離れると→
『ベールの彼方の生活④』→すぐに邪悪の道へ引きずり込もうと待ちかまえていたのでした。その後の事をかいつまんで言えば、彼女が肉体から出ると私は身を挺してその男が近づくのをさえぎり、男の近づけない第3界の安全な場所へ運んだという事です。今ではさらに2界層向上しております。
『ベールの彼方の生活④』その間ずっと私が保護し介抱してきました。今でも私が保護者となってあげている霊の1人です。これでお分かりでしょう。お2人にお会いして、あの時の要請の出どころが分かり、同時にその要請に応えて私が期待通りにお役に立っていた事を知って、とても嬉しく思った次第です。
『ベールの彼方の生活④』そうした喜びは地上にいる間は理解できないでしょう。しかしイエスは施物分配の話と、首尾よく使命を全うした者を待ち受ける歓迎の言葉の中に、その事をすでに暗示しておられます。こう言っておられます― →
『ベールの彼方の生活④』→“よくぞ果たされた。そなたたちの忠誠心を嬉しく思う。さ、私とともに喜びを分かち合おう。”(※)私もイエスとともに喜びを分かち合う光栄に浴したのです。ささやかながら私が首尾よくそれを全うして、今こうして一層大きな喜びの中に新たな大事業に参加する事を→
『ベールの彼方の生活④』→許されたのです。多分ご婦人の言葉はキリストがお述べになる言葉そのものだったのだと確信しました。キリストの喜びとは常に“献身の喜び”なのです。 アーネル†
『ベールの彼方の生活④』(※マタイ25・21。この部分は聖書によって用語や文章に若干の違いが見られるが、そのいずれもこの通信の文章とはかなり異なっている。アーネル霊は霊界の記録を見ているのであるから、この方が実際のイエスの言葉に近いのであろう―訳者)
『ベールの彼方の生活』4巻7章 天界の大軍、地球へ【2 先発隊の到着】
『ベールの彼方の生活』4巻7章 天界の大軍、地球へ【1 キリストの軍勢】
『ベールの彼方の生活④』【7章 天界の大軍、地球へ】【1 キリストの軍勢】【1919年3月6日 木曜日】天界の大草原のはるか上空へ向けてキリストの軍勢が勢揃いしておりました。上方へ向けて位階と霊格の順に1段また1段と階段状に台地(テラス)が連なり、私も仲間の隊員とともに、→
『ベールの彼方の生活④』→その上方でもなく下方でもなく、ほぼ中間に位置するあたりの台地に立っておりました。雲なす軍勢の1人1人がそれぞれの任務を帯びていたのです。この度の戦いに赴くための準備が進行するうちに吾々に様々な変化が生じておりました。その1つは地球圏の上層界と→
『ベールの彼方の生活④』→前回の話に出た他の複数の惑星の経綸者の双方から霊力の援助を受けて吾々の磁気力が一段と増し、それにつれて視力も通常の限界を超えて広がり、それまで見る事を得なかった界層まで見通せるようになった事です。その目的はエネルギーの調整―吾々より上の界と下の界の→
『ベールの彼方の生活④』→動きが等しく見えるようになる事で言いかえれば視力の焦点を自在に切り換える事ができるようになったという事です。これで一層大きな貢献をするためにより完璧な協調体制で臨む事になります。下の者は上の者の光輝と威力を見届ける事ができて勇気を鼓舞される→
『ベールの彼方の生活④』→事にもなり、さらに、戦いにおいて指揮と命令を受けやすくもなります。私はその視力でもって上方の光景と下方の光景、そしてあたり一面を見渡して、そこに見た驚異に畏敬の念を抱かずにはいられませんでした。それまで数々の美と驚異を見ておりましたが、→
『ベールの彼方の生活④』→その時に見た光景ほど驚異に満ちたものはありませんでした。地球の方角へ目をやると、様々な色彩が幾つもの層を成して連なっています。それは私の界と地上界との間の10の界層を象徴する色彩で、これより下降すべく整列している軍勢の装束から放たれているのでした。
『ベールの彼方の生活④』その下方、ちょうどその軍勢の背景となる位置に、霧状のものが地球を取り巻いているのが見えました。そのどんよりとして部厚く、あたかも濃いゼリー状の物質を思わせるものがところどころで渦を巻いている中を、赤色と暗緑色の筋や舌状のものがまとわりついているさまは、→
『ベールの彼方の生活④』→邪悪の化身である蛇が身の毛もよだつ地獄の悪行に奔走しているさまを彷彿とさせ、見るからに無気味なものでした。その光景に吾々は別にしりごみはしませんでした。恐怖心はいささかも抱きませんでした。それどころか、愛と僚友意識の中で互いに手を取り合い、→
『ベールの彼方の生活④』→しばし静粛な思いに浸りました。これからの吾々の旅はあの無気味な固まりと立ち向かい、しかもそれを通過しなければならないのです。目指す地球はその中にあるのです。何としてでも突き抜けて地球まで至らねばなりません。陰鬱極まる地球は今こそ吾々の援助を→
『ベールの彼方の生活④』→必要としているのです。その無気味な光景を見つめている私の脳裏に次のような考えが浮かびました―“人間はよくもあの恐ろしい濃霧の中にあって呼吸し生きていられるものだ”と。吾々自身について言えば、吾々の仕事は、既に述べた通り、質の転換作用によって→
『ベールの彼方の生活④』→少しでも多く吾々の組織体の中にそれを摂り入れていく事でした。どうしても消化不可能なものはさらに地獄の奥へと追いやり、言うなれば自然崩壊を待つほかはありません。大変な“食事”だと思われるでしょう。しかも大して“美味”ではありません。それは確かですが、→
『ベールの彼方の生活④』→それほどの軍勢で、しかもキリストをリーダーとして、吾々はきっと成就できるとの確信がありました。続いて吾々は向きを変えて、今度は上方へ目をやりました。すると幾重にも連なる台地に光り輝く存在が、ある者は立ち並び、ある者は悠然と動き回っているのが見えました。
『ベールの彼方の生活④』その台地の1つ1つが天界の1界であり、それがパノラマ式に巨大な階段状に連なって延々と目も眩まんばかりに上方へと伸び、ついに吾々の視力では突き通せない光輝の中へと突入し、その頂上が視界から消えました。その光輝を突き抜けて見届けうるのは吾々よりはるか上方の、→
『ベールの彼方の生活④』→光輝あふれる界層の存在のみでした。吾々にとってはただの“光の空間”であり、それ以外の何ものにも見えませんでした。それでも、可能な限りの無数の輝く存在を目にする事だけでも吾々に大いなる力を与えてくれました。
『ベールの彼方の生活④』最も近くの界層の存在でさえ何と素晴らしかった事でしょう。吾々より下層の者は見た事もない色調をした光輝を放つ素材でできた長衣(ローブ)に身を包んでおられました。さらに上層界の存在はゴースのごときオーラに包まれ、身体はその形も実体も麗しさにあふれ、→
『ベールの彼方の生活④』→その1体1体が荘厳な1篇の詩であり、あるいは愛と憧憬の優しい歌であり、優雅にして均整の取れた神であり、同格の神々とともに整然たる容姿を完全に披露して下さっておりました。その位置を貴殿なら多分“はるか彼方”と表現するところでしょう。
『ベールの彼方の生活④』確かにはるか彼方ではありました。が吾々の目にはその形体と衣装が―その形体を包む光輝を衣装と呼ぶならば―全体と同時に細部まで見る事ができました。しかし、それとてまだ中間の界層の話です。そのまた先には吾々の視力の及ばない存在が無数に実在していたのです。
『ベールの彼方の生活④』その事は知っておりました。が、知ってはいても見る事はできません。吾々の霊格にとってはあまりにも崇高すぎたのです。そしてその頂上には吾らがキリストが君臨している事も分かっておりました。その光景を見つめながら吾々仲間はこう語り合ったものです― →
『ベールの彼方の生活④』→“目の当たりにできる光景にしてこの美しさであれば、吾らがキリストの本来の栄光はいかばかりであろうか”と。しかし吾々の感嘆もそこまでで、それから先へ進む事はできず、一応そこで打ち切りました。と言うのも、間もなくそのキリスト自ら吾々の指揮のために→
『ベールの彼方の生活④』→降りて来られる事が判っていたからです。その折には地球へ向けて下降しつつ、各界の住民の能力に応じた波長の身体をまとわれるので、吾々の視力にも映じる可視性を身につけておられる事も知っておりました。天界の大軍の最高位にあらせられるキリスト自らその大軍の中を→
『ベールの彼方の生活④』→通り抜けて、一気に地球の大気圏の中に身を置かれるという事だったのです。然り、然り。キリストほどのリーダーはいません。天使ならびに人類を導く者としてキリストに匹敵する霊は、神格を具えた無数の存在の中にさえ見出す事はできません。私は厳粛なる気持で→
『ベールの彼方の生活④』→そう断言します。と申しますのも、天界の経綸に当たる神々といえども、その力量は一列平等ではなく、地上の人間と同じくその一柱一柱が独自の個性を表現しているのです。平凡な天使の部類に属する吾々もそうであり、さらに神聖さを加えた階級の天使もそうであり、→
『ベールの彼方の生活④』→さらにその上の階級の天使もそうであり、かくして最高級の大天使ともなれば父なる神の最高の美質を表現しておりますが、それにも各々の個性があるのです。そうした多種多様な神々の中にあっても、指導者としての資質においてキリストに匹敵する者はいないと申上げるのです。
『ベールの彼方の生活④』私が先ほど語り合ったと述べた仲間たちも同じ事を申しておりました。その事については改めて述べるつもりでおります。その時は以上の私の断言が正しいか否かがはっきりする事でしょう。 アーネル†
『ベールの彼方の生活』4巻6章 創造界の深奥【7 人類の数をしのぐ天界の大軍】
『ベールの彼方の生活④』【7 人類の数をしのぐ天界の大軍】【1919年3月5日 水曜日】これまでお話した事は天界の大事業について私が知り得た限り、そして私自身が体験した限りを叙述したものです。それを大ざっぱに申し上げたまでで、細かい点は申し上げておりません。
『ベールの彼方の生活④』そこで私はこれより、吾々が地上へ向かって前進しそして到着するまでの途中でこの目で見た事柄をいくつかお伝えしようと思います。が、その前に申し上げておきたい事があります。それは―作戦活動としての吾々の下降は休みなく続けられ、またそれには抗し難い勢いが→
『ベールの彼方の生活④』→ありました。1度も休まず、また前進への抵抗が止んだ事も1度もありませんでした。吾々霊団の団結が崩された事も1度もありませんでした。下層界からのいかなる勢力も吾々の布陣を突破する事はできませんでした。しかし個々の団員においては必ずしも確固不動とは→
『ベールの彼方の生活④』→言えませんでした。地上の概念に従って地上の言語で表現すれば、隊員の中には救助の必要のある者も時おり出ました。救助されるとしばし本来の住処で休息すべく上層界へと運ぶか、それとも天界の自由な境涯においてもっと気楽で激しさの少ない探検に従事する事になります。
『ベールの彼方の生活④』それというのも、この度の大事業は地球だけに向けられたものではなく、地上に関係した事が占める度合いは全体としては極めて小さいものでした。吾々が参加した作戦計画の全体ですら、物的宇宙の遠い片隅の小さな1点にすぎませんでした。
『ベールの彼方の生活④』大切なのは(そうした物的規模ではなく)霊的意義だったのです。既に申し上げた通り地上の情勢は地球よりかなり遠く離れた界層にも影響を及ぼしておりましたが、その勢いも次第に衰えはじめており、たとえその影響を感じても、一体それは何なのか、どこから来るのか→
『ベールの彼方の生活④』→分からずに困惑する者もいたほどです。しかし他の惑星の住民はその原因を察知し、地球を“困った存在”と考えておりました。確かに彼らは地球人類より霊的には進化しています。ですから、この度の問題をもしも吾々のようにかつて地上に生活して地上の事情に→
『ベールの彼方の生活④』→通じている者が処理せずにいたら、恐らくそれらの惑星の者が手がけていた事でしょう。霊的交信の技術を自在に使いこなすまでに進化している彼らは既に審議会においてその問題を議題にしておりました。彼らの動機は極めて純粋であり霊的に高度なものです。
『ベールの彼方の生活④』しかし、手段は彼らが独自に考え出すものであり、それは多分、地球人類が理解できる性質のものではなかったでしょう。そのまま適用したら恐らく手荒にすぎて、神も仏もあるものかといった観念を地球人に抱かせ、今こそ飛躍を必要とする時期に2世紀ばかり後戻りさせる→
『ベールの彼方の生活④』→事になっていたでしょう。過去2千年ばかりの間に地上人類を導き、今日なお導いている人々の苦難に心を痛められる時は、ぜひその事もお考えになって下さい。しかし、彼らもやがて、その問題をキリスト自らが引き受けられたとの情報がもたらされました。
『ベールの彼方の生活④』すると即座に彼らから、及ばずながらご援助いたしましょうとの申し出がありました。キリストはそれを受け入れられ、言うなれば予備軍として使用する事になりました。彼ら固有のエネルギーが霊力の流れにのって送られてきて吾々のエネルギーが補強されました。
『ベールの彼方の生活④』それで吾々は大いに威力を増し、その分だけ戦いが短くて済んだのでした。これより細かいお話をしていく上においては、ぜひそうした事情を念頭において下さい。これからの話は、過去の出来事の原因の観点から歴史を理解する上で参考になる事でしょう。
『ベールの彼方の生活④』将来人間はもっと裏側から歴史を研究するようになり、地上の進歩の途上における様々な表面上の出来事を、これまでとはもっと分かり易い形でつなぎ合わせる事ができるようになるでしょう。人間が吾々霊的存在とその働きかけを軽く見くびっているのが不思議でなりません。
『ベールの彼方の生活④』と言うのは、人類は地球上に広く分布して生活しており、その大半はまだ無人のままです。全体から言うとまだまだ極めて少数です。それに引きかえ吾々は地球の全域を取り囲み、さらに吾々の背後には天界の上層界にまで幾重にも大軍が控えております。それは大変な数であり、→
『ベールの彼方の生活④』→またその1人ひとりが地上のいかなる威力の持ち主よりも強烈な威力を秘めているのです。ああ、いずれ黎明の光が訪れれば人類も吾々の存在に気づき、天界の光明と光輝を見出す事でしょう。そうなれば地球も虚空という名の草原をひとり運行(たび)する侘びしさを→
『ベールの彼方の生活④』→味わわなくてすむでしょう。あたりを見渡せば妖精が楽しげに戯れている事を知り、もはや孤独なる存在ではなく、甦れる無数の他界者と一体であり、彼らは遙か彼方の天体上― →
『ベールの彼方の生活④』→夜空に見えるものもあれば地上からは見えないものもありますが―の生活者と結びつけてくれている事を知るでしょう。
『ベールの彼方の生活④』しかしそれは低き岸辺の船を外洋へと押し出し、天界へ向けて大いなる飛躍をするまでは望めない事でしょう。 アーネル†
『ベールの彼方の生活』4巻6章 創造界の深奥【6 下層界の浄化活動】
『ベールの彼方の生活④』【6 下層界の浄化活動】【1919年3月3日 月曜日】大事業への参加を求められたあと私が最初に手がけたのは下層界の浄化活動でした。太古においては下層の3界(※)が地球と密接に関係しており、また指導もしておりました。その逆も言えます。
『ベールの彼方の生活④』すなわち地球のもつ影響力を下層界が摂り入れていった事も事実です。これは当然の事です。なぜなら、そこの住民は地球からの渡来者であり、地球に近い界ほど直接的な影響力を受けていた訳です。(※いわゆる“4界説”に従えば“幽界”に相当すると考えていいであろう―訳者)
『ベールの彼方の生活④』死の港から上陸すると、ご承知の通り、指導霊に手引きされて人生についてより明確な視野をもつように指導されます。そうする事によって地上時代の誤った考えが正され、新しい光が受け入れられ吸収されていきます。しかしこの問題で貴殿にぜひ心に留めておいて頂きたいのは→
『ベールの彼方の生活④』→地上生活にせよ天界の生活にせよ、強圧的な規制によって縛る事は決してないという事です。自由意志の原則は神聖にして犯すべからざるものであり、間断なく、そして普遍的に作用しております。実はこの要素、この絶対的な要素が存在している事による1つの結果として→
『ベールの彼方の生活④』→霊界入りした者の浄化の過程において、それに携わる者にもいつしかある程度の誤った認識が蔓延するようになったのです。霊界へ持ち込まれる誤った考えの大半は“変質”の過程を経て有益で価値ある要素に転換されていましたが、全部とはいきませんでした。
『ベールの彼方の生活④』論理を寄せ付けず、あらゆる束縛を拒否するその自由意志の原理が、地上的な気まぐれな粒子の下層界への侵入を許し、それが大気中に漂うようになったのです。永い年月のうちにそれが蓄積しました。それは深刻な割合にまでは増えませんでした。そしてそのまま→
『ベールの彼方の生活④』→自然の成り行きに任せてもよい程度のものでした。が、当時においては、それは“まずい”事だったのです。その理由はこうです。当時の人類の発達の流れは下流へ、外部へ、物質へ、と向かっていました。それが神の意志でした。すなわち神はご自身を物的形態の中に→
『ベールの彼方の生活④』→細かく顕現していく事を意図されたのです。ところがその方向が下へ向かっていたために勢いが加速され、地上から侵入してくる誤謬の要素が、それを受け入れ変質させていく霊的要素をしのぐほどになったのです。そこで吾々が地上へ下降していくためには下層界を浄化する→
『ベールの彼方の生活④』→必要が生じました。地上への働きかけをさらに強化するための準備としてそれを行ったのです。【なぜ“さらに強化する”のですか。】地球はそれらの界層からの働きかけを常に受けているのですが、それはその働きかけを強めるために行った―つまり、→
『ベールの彼方の生活④』→輪をうまく転がして谷を無事に下りきり、今度は峰へ向けて勢いよく上昇させるに足るだけの弾みをつける事が目的でした。それはうまく行き、今その上昇過程が勢いよく始まっております。結局吾々には樽の中のワインにゼラチン状の化合物の膜が果たすような役割を→
『ベールの彼方の生活』→果たしたのです。知識欲にあふれ一瞬の油断もなくがっちりと手を取り合った雲なす大軍がゆっくりと下降していくと、そうした不純な要素をことごとく圧倒して地球へ向けて追い返しました。それが過去幾代にもわたって続けられたのです(この場合の“代”は3分の1世紀―訳者)
『ベールの彼方の生活④』間断なくそして刃向う者なしの吾々の働きによって遠き天界と地上との感覚が縮まるにつれて、その不純要素が濃縮されていきました。そしてそれが次第に地球を濃霧の如く包みました。圧縮されていくその成分は場所を求めて狂乱状態となって押し合うのでした。
『ベールの彼方の生活④』騒乱状態は吾々の軍勢がさらに地球圏へ接近するにつれて一段と激しくそして大きく広がり、次第に地上生活の中に混入し、ついにはエーテルの壁を突き破って激流の如く侵入し、人間世界の組織の一部となっていきました。見上げれば、その長期にわたって上昇し続けていた→
『ベールの彼方の生活④』→霧状の不純要素をきれいに取り除かれた天界が、その分だけ一段と明るさを増し美しくなっているのが分かりました。下へ目をやればその取り除かれた不純なる霧が―いかがでしょう、この問題をまだ続ける必要がありましょうか。
『ベールの彼方の生活④』地上の人間でも見る目をもつ者ならば、吾々の働きかけが過去2、3世紀の間に特に顕著になっているのを見て取る事ができるでしょう。今日もし当時の変動の中に吾々の働きを見抜けないという人がいれば、それはよほど血のめぐりの悪い人でしょう。
『ベールの彼方の生活④』実はその恐ろしい勢力が大気層―地上の科学用語を拝借します―を突き破って侵入した時、吾々もまたすぐそのあとについてなだれ込んだのでした。そして今こうして地上という最前線にいたり、ついに占領したという次第です。
『ベールの彼方の生活④』しかし、ああ、その戦いの長くかつ凄まじかった事といったらありませんでした。そうです。長く、そして凄まじく、時として恐ろしくさえありました。しかし人類の男性をよき戦友として、吾々は首尾よく勝利を得ました―女性もよき戦友であり、吾々はその気概を見て、→
『ベールの彼方の生活④』→喜びの中にも驚嘆の念を禁じ得ませんでした。そうでした。そうでした。地上の人類も大いに苦しい思いをされました。それだけにいっそう人類の事を愛しく思うのです。しかし忘れないで頂きたい。その戦いにおいて吾々が敵に深い痛手を負わせたからには、味方の方も→
『ベールの彼方の生活④』→少なからず、そして決して軽くない痛手を受けたのです。人類と共に吾々も大いなる苦しみを味わったという事です。そして人類の苦しむ姿を近くで目の当たりにするにつけ、吾々がともに苦しんだ事をむしろ嬉しく思ったのです。吾々が地上の人々を助けたという事が→
『ベールの彼方の生活④』→吾々のためにもなったという事です。人類の窮状を見た事が吾々のために大いに役立ったのです。【(第1次)世界大戦の事を言っておられるのですか。】そのクライマックスとしての大戦についてです。既に述べた通り、吾々の戦いは過去何代にもわたって続けられ、→
『ベールの彼方の生活④』→次第にその勢いを募らせておりました。そのために多くの人が尊い犠牲となり、様々な局面が展開しました。今その全てを細かく述べれば恐らく貴殿はそんな事まで…と意外に思われる事でしょう。少しだけ挙げれば、宗教的ならびに神学的分野、芸術分野、政治的ならびに→
『ベールの彼方の生活④』→民主主義の分野、科学の分野―戦争は過去1千年の間に大変な勢いで蔓延し、ほとんど全てのエネルギーを奪い取ってしまいました。しかし吾々は勝利を収めました。そして今や太陽をいっぱいに受けた峰へ向けて天界の道を揃って歩んでおります。
『ベールの彼方の生活④』かの谷間は眼下に暗く横たわっております。そこで吾々は杖をしっかりと手にして、顔を峰へ向けます。するとその遠い峰から微かな光が射し、それが戦争の傷跡も生々しい手足に当たると、その傷が花輪となって吾々の胸を飾り、腕輪となって手首を飾り、→
『ベールの彼方の生活④』→破れ汚れた衣服が美しい透し細工のレースとなります。何となれば吾々の傷は名誉の負傷であり、衣服がその武勲を物語っているからです。そして吾々の共通の偉大なるキャプテンが、その戦いの何たるかを理解し傷の何たるかもむろん理解しておられる、キリストに→
『ベールの彼方の生活④』→他ならないのです。では私より祝福を。今夜の私はいささかの悲しみの情も感じませんが、私にとってその戦いはまだ沈黙の記憶とはなっておりません。私の内部には今なお天界の鬨(かちどき)の声が上がる事があり、また当時の戦いを思い出して吾々の為にした事、→
『ベールの彼方の生活④』→またそれ以上に、吾々が目にした事、そして地上の人々のために流した涙の事を思い起こすと、思わず手を握りしめる事すらあるのです。もちろん吾々とて涙を流したのです。1度ならず流しました。何度も流しました。と言うのも、吾々には陣頭に立って指揮される→
『ベールの彼方の生活④』→キリストのお姿が鮮明に見えても、人間の粗末な視力は霧が重くかかり、たとえ見えても、ほんの薄ぼんやりとしか見えませんでした。それがかえって吾々の哀れみの情を誘ったのでした。しかしながら、自然にあふれ出る涙を通して、貴殿らの天晴れな戦いぶりを驚きと→
『ベールの彼方の生活④』→少なからぬ畏敬の念をもって眺めたものでした。よくぞ戦われました。美事な戦いぶりでした。吾々は驚きのあまり立ち尽くし、互いにこう言ったものでした―吾々と同じく地上の人たちも同じ王、同じキャプテンの兵士だったのだと。
『ベールの彼方の生活④』そこで全ての得心がいき、なおも涙を流しつつ喜び、それからキリストの方へ目をやりました。キリストは雄々しく指揮しておられました。そのお姿に吾々は貴殿らに代って讃仰の祈りを捧げたのでした。 アーネル†
『ベールの彼方の生活』4巻6章 創造界の深奥【5 物質科学から霊的科学へ】
『ベールの彼方の生活④』【5 物質科学から霊的科学へ】【1919年2月28日 金曜日】人類が目覚めの遅い永い惰眠を貪る巨大な寝室から出て活発な活動の夜明けへと進み、未来において到達すべき遠い界層をはじめて見つめた時にも、やはり神々による廟議は開かれていたのでした。
『ベールの彼方の生活④』その会議の出席者は多分、例のアトランティス大陸の消滅とそれよりずっと後の奮闘の時代―人類の潜在的偉大さの中から新たな要素がこれより先の進化の機構の中で発現していく産みの苦しみを見ていた事でしょう。後者は同じ高き界層からの働きかけによって→
『ベールの彼方の生活④』→物質科学が発達した事です。人間はそれをもって人類が蓄積してきた叡智の最後を飾るものと考えました。しかし、その程度の物的知識を掻き集めたくらいでおしまいになるものではありません。大いなる進化は今なお続いているのです。
『ベールの彼方の生活④』目的成就の都市は地上にあるのではありません。はるか高遠の彼方にあるのです。人間は今やっと谷を越え、その途中の小川で石ころを拾い集めてきたばかりです。今度はそれを宝石細工人のもとへ持って行かねばなりません。そういう時期もいずれは到来します。
『ベールの彼方の生活④』細工人はそれを堂々たる王冠を飾るにふさわしい輝きと美しさにあふれたものに磨き上げてくれる事でしょう。しかし細工人はその低き谷間にはいません。今人類が登りかけている坂道にもいません。光をいっぱいに受けた温い高地にいるのです。
『ベールの彼方の生活④』そこには王とその廷臣の住む宮殿があります。しかし王自身は無数の廷臣を引き連れて遙か下界へ降りられ、再び地上をお歩きになっている。ただし、この度はそのお姿は(地上の人間には)見えません。吾々はその後について歩み、こうした形で貴殿にメッセージを送り、→
『ベールの彼方の生活④』→王より命じられた仕事の成就に勤しんでいるところです。【では、アーネルさん、キリストは今も地上にいらっしゃり、あなたをはじめ大勢の方たちはそのキリストの命令を受けていると理解してよろしいでしょうか。】キリストからでないとしたら、他に誰から受けるのでしょう。
『ベールの彼方の生活④』今まさに進行中の大変な霊的勢力に目を向けて、判断を誤らぬようにして下さい。地上の科学は勝利に酔い痴れたものの、その後さらに飛躍してみれば、5感の世界だけの科学は根底より崩れ、物的尺度を超えた世界の科学へと突入してしまいました。
『ベールの彼方の生活④』皮肉にも物的科学万能主義がそこまで駆り立てたのです。今やしるしと不思議(霊的現象の事。ヨハネ4・48―訳者)が様々な形で語られ、かつてはひそひそ話の中で語られたものが熱弁をもって語られるようになりました。周囲に目をやってご覧なさい。
『ベールの彼方の生活④』地上という大海の表面に吾々無数の霊が活発に活動しているその笑顔が映って見える事であろう。声こそ発しなくても確かに聞こえるであろう。姿こそ見えなくても、吾々の指先が水面にさざ波を立てているのが見えるであろう。人間は吾々の存在が感じ取れないと言う。
『ベールの彼方の生活④』しかし吾々の存在は常に人間世界を覆い人間のこしらえるパイ1つ1つに指を突っ込んでは悦に入っております。中のプラムを摘み取るような事はしません。絶対に致しません。むしろ吾々の味付けによって一段とおいしさを増しているはずです。
『ベールの彼方の生活④』あるとき鋳掛屋がポーチで食事をしたあと、しろめ製の皿をテーブルに置き忘れたまま家に入って寝た。暗くなって1匹の年取ったネコが現れてその皿に残っていた肉を食べた。それからネコはおいしい肉の臭いの残る皿にのって、そこを寝ぐらにしようとした。
『ベールの彼方の生活④』しろめの硬さのために寝心地が悪く、皿の中でぐるぐると向きを変えているうちに、その毛で皿はそれまでになくピカピカに光り輝いた。翌朝、しろめの皿の事を思い出した鋳掛屋が飛び出してみると、朝日を受けてその皿が黄金のように輝いている。
『ベールの彼方の生活④』「はて、不思議な事があるもの…」彼はつぶやいた。「肉は消えているのに皿は残っている。肉が消えたという事は“盗っ人”の仕業という事になるが、皿が残っていて、その上ピカピカに光っているところをみると、そいつは“良き友”に違いない。しかし待てよ。」
『ベールの彼方の生活④』「そうだ。たぶんこういう事だろう―肉は自分が食べてしまっていたんだ。そして星の事かなんか、高尚な事を考えながら1杯やっているうちに、自分のジャーキン(革製の短い上着)で磨いていたんだ」
『ベールの彼方の生活④』【この寓話の中のネコがあなたという訳ですね?】そのネコの毛1本という事です。ほんの1本にすぎず、それ以上のものではありません。 アーネル†
『ベールの彼方の生活④』訳者注―この寓話の部分はなぜか文法上にも構文上にも乱れが見られ細かい部分が読み取れないので、大体のあらすじの訳に留めておいた。要するに人類は各分野での進歩・発展を誇るが、肝心な事は霊の世界からのインスピレーションによって知らないうちに指導され→
『ベールの彼方の生活④』→援助されているという事であろう。
『ベールの彼方の生活』4巻6章 創造界の深奥【4 キリスト界】
『ベールの彼方の生活④』【4 キリスト界】【1919年2月27日 木曜日】【これまでお述べになった事は全て第11界で起きた事と理解しております。そうですね、アーネルさん?】ザブディエル殿がお示しになった界層の数え方に従えばそうです。私には貴殿の質問なさりたい事の主旨が目に見えます
『ベールの彼方の生活④』精神の中で半ば形を整えつつあります。取りあえずそれを処理してから私の用意した話に移ります。既にお話したとおり、この大事業の構想は第11界で生まれたのではなく、はるかに上層の高級界です。キリスト界については既に読まれたでしょう。そこが実在界なのですが、→
『ベールの彼方の生活④』→語る人によって様々に理解されております。そもそも界層というのは内情も境界も、地上の思想的慣習によって厳密に区分けする事は不可能なのです。しかし語るとなるとどうしても区分けし分類せざるを得ません。吾々も貴殿の理解を助ける意味でそうしている訳ですが、→
『ベールの彼方の生活④』→普遍的なものでない事だけは承知しておいて下さい。吾々も絶対的と思っている訳ではありません。表面的な言い回しの裏にあるものに注目して下されば、数々の通信にもある種の共通したものがある事を発見される事でしょう。界は7つあって7番目がキリスト界だと→
『ベールの彼方の生活④』→言う人がいます。それはそれで結構です。ザブディエル殿と私は第11界までの話をしました。これまでの吾々の区切り方でいけばキリスト界は7の倍に1を加えた数となるでしょう。つまりこういう事です。吾々の2つの界が7界説の1界に相当する訳です。
『ベールの彼方の生活④』7界説の人も第7界をキリストのいる界とせずに、キリストが支配する界層の最高界をキリスト界とすべきであると考えます。吾々の数え方でいけば第14界つまり7の倍の界が吾々第11界の居住者にとって実感をもって感識できる最高の界です。
『ベールの彼方の生活④』その界より上の界がどうなっているかについての情報を理解する事ができないのです。そこで吾々は、キリストがその界における絶対的支配者である以上は、キリスト自身はそれよりもう1つ上の界の存在であらねばならないと考えるのです。
『ベールの彼方の生活④』その界のいずこにもキリストの存在しない場所は1かけらも無いのです。という事は、もしもその界全体がキリストの霊の中に包まれているとするならば、キリストご自身はさらにその上にいらっしゃらねばならない事になります。それで7界の倍に1界を加える訳です。
『ベールの彼方の生活④』以上がこれまでに吾々が入手した情報に基づいて推理しうる限界です。そこで吾々はこう申し上げます。数字で言えばキリスト界は第15界で、その中に下の14界の全てが包含される、と。吾々に言えるのはそこまでで、その第15界がどうなっているのか、境界がどこにあるのか→
『ベールの彼方の生活④』→についても断言は控えます。よく分からないのです。しかし限界がどこにあろうと―限界があるとした上での話ですが―それより下の界層を支配する者に霊力と権能とが授けられるのはその界からである事は間違いありません。そこが吾々の想像の限界です。
『ベールの彼方の生活④』そこから先は“偉大なる未知”の世界です。ただ、あと1つだけ付け加えておきましょう。ここまで述べてもまだ用心を忘れていないと確信した上で申しましょう―私は知ったかぶりをしていい加減な憶測で申し上げないように常に用心しております。それはこういう事です。
『ベールの彼方の生活④』私がお話した神々による廟議と同じものが各世紀ごとに召集されているという事です。その際、受け入れる用意のある者のために啓示がなされる時期についての神々の議決は、地球の記録簿の中に記されております。
『ベールの彼方の生活④』かくして物的宇宙(コスモス)の創造計画もその廟議において作製されていた訳です。 アーネル†
『ベールの彼方の生活』4巻6章 創造界の深奥【3 神々による廟議(びょうぎ)】
『ベールの彼方の生活④』【3 神々による廟議(びょうぎ)】【1919年2月26日 水曜日】―その“尊き大事業”というのは何でしょうか。(訳者注―前回の通信との間に一週間の空白があるのに、いかにもすぐ続いているような言い方をしているのは多分その前に前回の通信についての)→
『ベールの彼方の生活④』→(簡単なやりとりがあったか、それともオーエンがそのように書き改めたかのいずれかであろう)それについてこれから述べようと思っていたところです。貴殿も今夜は書き留める事ができます。この話題はここ何世紀かの出来事を理解して頂く上で大切な意味をもっております。
『ベールの彼方の生活④』まず注目して頂きたいのは、その大事業は例の“天使の塔”で計画されたものではないという事です。これまでお話した界層よりさらに高い境涯において幾世紀も前からもくろまれていた事でした。いつの世紀においても、その頭初に神界において審議会が催されると→
『ベールの彼方の生活④』→聞いております。まず過去が生み出す結果が計算されて披露されます。遠い過去の事は簡潔な図表の形で改めて披露され、比較的新しい世紀の事は詳しく披露されます。前世紀までの2、3年の事は全項目が披露されます。それらがその時点で地上で進行中の出来事との→
『ベールの彼方の生活④』→関連性において検討されます。それから同族惑星の聴聞会を催し、さらに地球と同族惑星とを一緒にした聴聞会を催します。それから審議会が開かれ、来るべき世紀に適用された場合に他の天体の経綸に当たっている天使群の行動と調和するような行動計画に関する結論が下されます
『ベールの彼方の生活④』悠揚せまらぬ雰囲気の中に行われるとの事です。【“同族惑星”という用語について説明してください】これは発達の程度においても進化の方向においても地球によく似通った惑星の事です。つまり地球によく似た自由意志に基づく経路をたどり、知性と霊性において→
『ベールの彼方の生活④』→現段階の地球に極めて近い段階に達している天体の事です。空間距離において地球に非常に近接していると同時に、知的ならびに霊的性向においても近いという事です。【その天体の名前をいくつか挙げていただけますか。】挙げようと思えば挙げられますが、やめておきます。
『ベールの彼方の生活④』誰でも知っている事を知ったかぶりをして…などと言われるのはいやですから。貴殿の精神の中にそれにピッタリの成句(フレーズ)が見えます―to play to the gallery(大向うを喜ばせる、俗受けをねらう)。最もそれだけが理由ではありません。
『ベールの彼方の生活④』同じ太陽域の中にありながら人間の肉眼に映じない天体もあるからです。それもその中に数えないといけません。さらには太陽域の一番端にあって事実上は他の恒星の引力作用を受けていながら、程度においては地球と同族になるものも、少ないながらあります。
『ベールの彼方の生活④』それから太陽域の中―【太陽系の事ですか。】太陽系、そうです―その中にあってしかも成分が(肉眼に映じなくても)物質の範疇に入るものが2つあります。現在の地上の天文学ではまだ問題とされておりませんが、いずれ話題になるでしょう。
『ベールの彼方の生活④』しかしこんな予言はここでは関係ありません。そうした審査結果がふるいに掛けられてから、いわば地球号の次の航海のための海図が用意され、ともづなが解かれて外洋へと船出します。【それらの審議会においてキリストはいかなる位置を占めておられるのでしょうか。】
『ベールの彼方の生活④』それらではなく“その”と単数形で書いて下さい。審議会はたった一つだけです。が会合は世紀ごとに催されます。出席者は絶対不同という訳ではありませんが、変わるとしても2、3エオン(※)の間にわずかな変動があるだけです。
『ベールの彼方の生活④』(※EON 地質学的時代区分の最大の期間で、億単位で数える―訳者)【王(キング)ですか。】そう書いてはなりますまい。違います。その審議会が開かれる界層より下の階層においては王ですが、その審議会においては“主宰霊”です。これは私が得た知識から→
『ベールの彼方の生活④』→述べているにすぎません。実際に見た訳ではなく、私および同じ界の仲間が上層界を通して得たものです。これでお分かりでしょうか。もっと話を進めましょうか。【どうも有難うございました。私なりに分かったように思います。】それは結構な事です。
『ベールの彼方の生活④』そう聞いてうれしく思います。それというのも、私はもとより、私より幾らか上の界層の者でも、その審議会の実際の様子は象徴的にしか理解されていないのです。私も同じ手法でそれを貴殿に伝え、貴殿はそれに満足しておられる。結構に思います。
『ベールの彼方の生活④』では先を続けさせて頂きます。以上でお分かりの通り、審議会の主宰霊たるキリスト自らが進んでその大事業を引き受けられたのです。それは私と共にこの仕事に携わっている者たちの目から見れば、そうあってしかるべき事でした。すなわち、いかなる決断になるにせよ→
『ベールの彼方の生活④』→最後の責任を負うべき立場の者が自ら実践し目的を成就すべきであり、それをキリストがおやりになられたという事です。今日キリストはその任務を帯びて地上人類の真只中におられ、地球へ降下された後、既にその半ばを成就されて、方向を上へ転じて父の古里へと→
『ベールの彼方の生活④』→向かわれています。この程度の事で驚かれてはなりません。もっと細かい事をお話する予定でおります。以上の事は雄牛に突き刺した矢印と思って下さい。抜き取らずにおきましょう。途中の多くの脇道にまぎれ込まずに無事にゴールへ導くための目印となるでしょう。
『ベールの彼方の生活④』脇道にもいろいろと興味ぶかい事があり、勉強にもなり美しくもあるのですが、今の吾々にはそれは関係ありません。私がお伝えしたいのは地球に関わる大事業の事です。他の天体への影響の事は脇に置いて、地球の事に話題をしぼりましょう。少なくとも地球を主体に→
『ベールの彼方の生活④』→話を進めましょう。ただ一つだけ例外があります。貴殿は地球以外の天体について知りたがっておられる様子なので、そのうちの火星について述べておきましょう。最近この孤独な天体に多くの関心が寄せられて、科学者よりも一般市民の間で大変な関心の的となっております。
『ベールの彼方の生活④』そうですね?【そうです。ま、そう言っても構わないでしょう。】その原因は反射作用にあります。まず火星の住民の方から働きかけがあったのです。地球へ向けて厖大な思念を送り、地球人類がそれに反応を示した―という程度を超えて、もっと深い関係にあります。
『ベールの彼方の生活④』そうした相互関係が生じる原因は地球人類と火星人類との近親関係にあります。天文学者の中には火星の住民の事を親しみを込めて火星人(マーシャン)と呼んでいる人がいますが、火星人がそれを聞いたら可笑しく思うかも知れません。吾々もちょっぴり苦笑を誘われそうな→
『ベールの彼方の生活④』→愉快さを覚えます。火星人を研究している者は知性の点で地球人よりはるかに進んでいるように言います。そうでしょう?【そうです。おっしゃる通りです。そう言ってます。】それは間違いです。火星人の方が地球人より進んでいる面もあります。しかし少なからぬ面において→
『ベールの彼方の生活④』→地球人より後れています。私も訪れてみた事があるのです。間違いありません。いずれ地上の科学もその点について正確に捉える事になるでしょう。その時はより誇りに思って然るべきでしょう。吾々がしばしば明言を控え余計なおしゃべりを慎むのはそのためです。
『ベールの彼方の生活④』同じ理由でここでも控えましょう。【火星を訪れた事があるとおっしゃいましたが…】火星圏の者も吾々のところへ来たり地球を訪れたりしております。こうした事を吾々は効率よく行っております。私は例の塔においてキリストの霊団に志願した一人です。
『ベールの彼方の生活④』他にもいくつかの霊団が編成されその後もさらに追加されました。幾百万とも知れぬ大軍の全てが各自の役目について特訓を受けた者ばかりです。その訓練に倣って今度は自ら組織した霊団を特訓します。各自に任務を与えます。私にとっては地球以外の天体上の住民について→
『ベールの彼方の生活④』→その現状と進歩の様子を知っておく事が任務の遂行上不可欠だったのです。大学を言うなれば次々と転校したのもそのためでした。とても勉強になりました。その一つが“聖なる山”の大聖堂であり、もう一つは“五つの塔の大学”であり、火星もその一つでした。
『ベールの彼方の生活④』【あなたの任務は何だったのか、よろしかったら教えて下さい。】“何だったのか”と過去形をお使いになられました。私の任務は現在までつながっております。今夜、ここで、こうして貴殿と共にそれに携わっております。
『ベールの彼方の生活④』その進展のためのご援助に対してお礼申し上げます。 アーネル†
『ベールの彼方の生活』4巻6章 創造界の深奥【2 光沢のない王冠】
『ベールの彼方の生活④』【2 光沢のない王冠】【1919年2月20日 木曜日】やがて青色のマントが気化するごとくに大気の中へ融け入ってしまいました。見ると主は相変わらず玉座の中に座しておられましたが、装束が変わっていました。両肩には同じ青色をしたケープ(外衣)を掛けておられ→
『ベールの彼方の生活④』→それが両脇まで下り、その内側には黄金の長下着を付けておられるのが見えました。座しておられるためにそれが膝の下まで垂れていました。それが黄金色の混った緑色の幅の広いベルトで締められており、縁取りはルビー色でした。冠帯は相変わらず頭部に付いていましたが→
『ベールの彼方の生活④』→その内側には一群の星がきらめいてそれが主の周りに様々な色彩を漂わせておりました。主は右手に“光沢のない”白の王冠を持っておられます。主の周りにあるもので光沢のないものとしては、それが唯一のものでした。それだけに一層吾々の目につくのでした。
『ベールの彼方の生活④』やがて主が腰をお上げになり、その王冠をすぐ前のあがり段に置かれ、吾々の方へ向いてお立ちになりました。それから次のようなお言葉を述べられました。「そなたたちはたった今、私の王国の中をのぞかれ、これより先の事をご覧になられた。が、そなたたちのごとく」→
『ベールの彼方の生活④』→「その内部の美しさを見る事を得ぬ者もいる事を忘れてはならぬ。かの飛地にいる者たちは私の事を朧ろげにしか思う事ができぬ。まだ十分に意識が目覚めていないからである。ラメルよ、この者たちにこの遠く離れた者たちの現在の身の上と来るべき宿命について」→
『ベールの彼方の生活④』→「聞かせてあげよ」すると、あがり段の両脇で静かに待機していた天使群の中のお一人が玉座のあがり段の一番下に立たれた。白装束をまとい、左肩から腰部へかけて銀のたすきを掛けておられました。その方が主にうながされて語られたのですが、そのお声は一つの音声ではなく→
『ベールの彼方の生活④』→無数の和音でできているような響きがありました。共鳴度が高く、周りの空中に鳴り響き、上空高くあがって一つひとつの音がゴースの弦に触れて反響しているみたいでした。一つ又一つと空中の弦が音を響かせていき、やがて、あたかも無数のハープがハーモニーを→
『ベールの彼方の生活④』→奏でるかの如くに、虚空全体が妙(たえ)なる震動に満ちるのでした。その震動の中にあって、この方のお言葉は少しも鮮明度が失われず、ますます調子を上げ、描写性が増し、その意味する事柄の本性との一体性を増し、ますます具体性と実質性に富み、あたかも→
『ベールの彼方の生活④』→無地のキャンバスに黒の絵の具で描きそれに色彩を加えるような感じでした。従ってその言葉に生命がこもっており、ただの音声だけではありませんでした。こう語られたのです。→主の顕現がはるか彼方の栄光の境涯にのみ行われているかに思えたとて、それは一向にかまわぬ事。
『ベールの彼方の生活④』主は同時にここにも坐します。われらは主の子孫。主の生命の中に生きるものなればなり。われらがその光乏しき土地の者にとりて主がわれらに対するが如く懸け離れて見えたとて、それもかまわぬ事。彼らはわれらの同胞であり、われらも彼らの同胞なればなり。
『ベールの彼方の生活④』彼らが生命の在り処を知らぬとて―それにより生きて、しかも道を見失ったとて、いささかもかまわぬ事。手探りでそれを求め、やっとその一かけらを手にする。しかし少なくともその事において彼らの努力は正しく、分からぬながらもわれらの方へ向けて両手を差しのべる。
『ベールの彼方の生活④』それでも暗闇の中で彼らは転びあるいは脇道へと迷い込む。向上の道が妨げられる。その中にあって少しでも先の見える者は何も見えずに迷える者が再び戻ってくるのを待ち、ゆっくりとした足取りで、しかし一団となりて、共に進む。
『ベールの彼方の生活④』その道程がいかに長かろうと、それは一向にかまわぬ事。われらも彼らの到着を待ち、相互愛の中に大いなる祝福を得、互いに与え与えられつつ、手を取り合って向上しようぞ。途中にて躓こうと、われらへ向けて歩を進める彼らを待たん。あくまでも待ち続けん。
『ベールの彼方の生活④』あるいはわれらがキリストがかの昔、栄光の装束を脱ぎ棄てられ、みすぼらしく粗末な衣服をまとわれて、迷える子羊を求めて降りられ、地上に慰めの真理をもたらされた如くに、われらも下界へ赴きて彼らを手引きしようぞ。
『ベールの彼方の生活④』主をしてそうなさしめた力が最高界の力であった事は驚異なり。われらのこの宇宙よりさらに大なる規模の宇宙に舞う存在とて、謙虚なるその神の子に敬意を表し深く頭を垂れ給うた。なんとなれば、すでに叡智に富める彼らですら、宇宙を創造させる力が愛に他ならぬ事→
『ベールの彼方の生活④』→全宇宙が愛に満ち愛によりて構成されている事を改めて、また一段と深く、思い知らされる事になったゆえである。ゆえに、神が全てを超越した存在であっても一向にかまわぬ事。われらにはその子キリストが在しませばなり。
『ベールの彼方の生活④』われらよりはるかに下界に神の子羊がいても一向にかまわぬ事。キリストはその子羊のもとにも赴かれたるなり。彼らがたとえ手足は弱く視力はおぼろげであろうと一向にかまわぬ。キリストが彼らの力であり、道を大きく誤る事なく、あるいはまた完全に道を見失う事のなきよう、→
『ベールの彼方の生活④』→キリストが彼らへの灯火(ランプ)となる事であろう。また、たとえ今はわれらが有難くも知る事を得たより高き光明界の存在を彼らが知らずとも、いつの日かわれらと共に喜びを分かち、われらも彼らと喜びを分かつ日が到来しよう―いつの日かきっと。
『ベールの彼方の生活④』が、果たしてわれらのうちの誰が、このたびの戦いのために差し向けられる力を背に、かの冠を引き受けるのであろう。自らの頭に置く事を申し出る者はどなたであろうか。それは光沢を欠き肩に重くのしかかる事を覚悟せねばならぬが。
『ベールの彼方の生活④』信念強固にして一途なる者はここに立ち、その冠を受け取るがよい。今こそ光沢を欠くが、それは一向にかまわぬ事。いずれ大事業の完遂の暁には、内に秘められた光により燦然と輝く事であろう。
『ベールの彼方の生活④』―語り終わると一場を沈黙が支配しました。ただ音楽のみが、いかにも自ら志願する者が出るまで終わるのを渋るが如くに、物欲しげに優しく吾々の周りに漂い続けるのでした。その時です。誰一人として進み出てその大事業を買って出る者がいないと見て、→
『ベールの彼方の生活④』→キリスト自らが階段を下りてその冠を取り上げ、自らの頭に置かれたのです。それは深く眉のすぐ上まで被さりました。それほど重いという事を示しておりました。そうです、今もその冠はキリストの頭上にあります。しかし、かつて見られなかった光沢が少し見え始めて→
『ベールの彼方の生活④』→おります。そこで主が吾々にこう述べられました―「さて友よ、そなたたちの中で私について来てくれる者はいるであろうか」その御声に吾々全員がひざまずき、主の祝福を受けたのでした。 アーネル†
『ベールの彼方の生活』4巻6章 創造界の深奥【1 人類の未来をのぞく】
『ベールの彼方の生活④』【6章 創造界の深奥】【1 人類の未来をのぞく 1919年2月19日 水曜日】今夜貴殿と共にいるのは、1年前に王冠状の大ホールにおける儀式についての通信を送っていた霊団の者です。ご記憶と思いますが、あの時は貴殿のエネルギーの消耗が激しかったために→
『ベールの彼方の生活④』→中止のやむなきに至りました。このたび再度あの時のテーマを取り上げて、今ここでその続きを述べたいと思います。キリストと神への讃仰のために玉座に近づいたのは人類を担当する天使群でした。すると玉座の背後から使者が進み出て、幾つもの部門に大別されたその→
『ベールの彼方の生活④』→大群へ向けて言葉をかけられた。天使とはいえその部門ごとに霊的発達程度は様々で、おのずから上下の差がありました。その部門の1つひとつに順々に声をかけて、これから先の進化へ向けて指導と激励の言葉をお与えになられたのでした。以上が前回までの要約です。
『ベールの彼方の生活④』では儀式の次の段階に進みましょう。創造の主宰霊たるキリストが坐す玉座の周りに一郡の霧状の雲が出現しました。その中で無数の色彩がヨコ糸とタテ糸のように交錯している様子は見るからに美しい光景でした。やがてその雲の、玉座の真後ろになる辺りから光輝が→
『ベールの彼方の生活④』→扇状に放射され、高くそして幅広く伸びていきます。主はその中央の下方に位置しておられます。その光は青と緑と琥珀色をしており、キリスト界の物的部門―地球や惑星や恒星をこれから構成していく基本成分から成る(天界の)現象界―から生産されるエネルギーが→
『ベールの彼方の生活④』→放散されているのでした。やがてその雲状のものが活発な動きを見せながら凝縮してマントの形態を整えたのを見ると、色彩の配置も美事な調和関係をみせたものになっておりました。それが恍惚たる風情の中に座する主宰霊キリストに掛けられ身体にまとわれると、→
『ベールの彼方の生活④』→それがまた一段と美しく映えるのでした。全体の色調は青です。深く濃い青ですが、それでいて明るいのです。縁取りは黄金色、その内側がボーダー(内べり)となっていて、それが舗道に広がり、上がり段にまで垂れております。ボーダーの部分が特に幅が広く、金と銀と緑の→
『ベールの彼方の生活④』→色調をしており、さらに内側へ向けて深紅と琥珀の2本の太い筋が走っております。時おり永い間隔を置いてその青のマントの上に逆さまになった王冠(その訳をあとでオーエン氏自身が尋ねる―訳者)に似たものが現れます。冠の縁にパールの襟飾りが付いており、→
『ベールの彼方の生活④』→それが幾種類もの色彩を放っております。パールグレー(淡灰色)ではなくて―何と言えばよいのでしょうか。内部からの輝きがキリストの頭部のあたりに漂っております。といって、それによってお顔が霞むことなく、後光となってお顔を浮き出させておりました。
『ベールの彼方の生活④』その後光に照らされた全体像を遠くより眺めると、お顔そのものがその光の出る“核”のように見えるのでした。しかし実際はそうではありません。“そう見えた”というまでの事です。頭部には王冠はなく、ただ白と赤の冠帯がつけられており、それが頭髪を両耳の後ろで→
『ベールの彼方の生活④』→留めております。前にお話した“祈りの冠帯(ダイアデム)”にどこか似ておりました。【このたびは色彩を細かく説明なさっておられますが、それぞれにどんな意味があるのでしょうか。】吾々の目に映った色彩はグループ毎に実に美しく且つそれなりの意図のもとに配置されて→
『ベールの彼方の生活④』→いたのですが、その意図を細かく説明する事は不可能です。が、大体の意味を、それも貴殿に理解できる範囲で述べてみましょう。後光のように広がっていた光輝は物質界を象徴し、それを背景としてキリストの姿を明確に映し出し、その慈悲深い側面を浮き上がらせる→
『ベールの彼方の生活④』→意図がありました。頭部の冠帯は地上の人類ならびにすでに地上を去って霊界入りした人類の洗練浄化された精髄の象徴でした。【赤色と白色をしていたとおっしゃいましたが、それにも意味があったのでしょうか。】ありました。人類が強圧性と貪欲性と身勝手さの境涯から→
『ベールの彼方の生活④』→脱して、全てが一体となって調和し融合して1つの無色の光としての存在となっていく事を赤から白への転換として象徴していたのです。その光は完璧な白さをしていると同時に強烈な威力も秘めております。外部から見る者には冷ややかさと静けさをもった雪のような白さの→
『ベールの彼方の生活④』→帯として映じますが、内部から見る者にはそれを構成している色調の1つひとつが識別され、その融和が生み出す輝きの中に温か味を感じ取ります。外側から見ると白い光は冷たく見えます。内側から見る者には愛と安らぎの輝きとして見えます。
『ベールの彼方の生活④』【あなたもその内側へ入られた訳ですか。】いいえ、完全に内側まで入った事はありません。その神殿のほんの入口のところまでです。それも、勇気を奮いおこし意念を総結集して、ようやくそこまで近づけたのでした。しかもその時1回きりで、それもお許しを得た上での事でした。
『ベールの彼方の生活④』自分で神殿の扉を開けたのではありません。創造界のキリストに仕える大天使のお1人が開けて下さったのでした。私の背後へ回って、私があまりの美しさに失神しないように配慮して下さったのです。すなわち私の片方の肩の上から手を伸ばしてその方のマントで私の身体を覆い、→
『ベールの彼方の生活④』→扉をほんの少しだけ押し開けて、少しの間その状態を保って下さいました。かくして私は、目をかざされ身体を包み隠された状態の中でその内側の光輝を見、そして感じ取ったのでした。それだけでも私は、キリストがその創造エネルギーを行使しつくし計画の全てを完了なされた→
『ベールの彼方の生活④』→暁に人類がどうなるかを十分に悟り知る事ができました。すなわち今はそのお顔を吾々低級なる霊の方へお向けになっておられる。吾々の背後には地上人類が控えている。吾々はその地上人類の前衛です。が、計画完了の暁にはお顔を反対の方へ向けられ、無数の霊を従えて→
『ベールの彼方の生活④』→父の玉座へと向かわれ、そこで真の意味で全存在と一体になられる。その時には冠帯の赤は白と融合し、白も少しは温みを増している事でしょう。さて、貴殿の質問で私は話をそらせて冠帯について語る事になってしまいましたが、例の青のマントについては次のように述べて→
『ベールの彼方の生活④』→おきましょう。すなわち物質の精髄を背景としてキリスト及びマント、そして玉座の姿かたちを浮き上がらせた事。冠帯は現時点の地上人類とこれ以後の天界への向上の可能性とを融合せしめ、一方マントは全創造物が父より出でて外部へと進化する時に通過した→
『ベールの彼方の生活』→キリストの身体を覆っている事。そのマントの中に物質と有機体を動かし機能させ活力を賦与しているところの全エネルギーが融合している、といったところです。その中には貴殿のご存じのものも幾つかあります。電気にエーテル。これは自動性はなくてもそれ自身のエネルギーを→
『ベールの彼方の生活④』→有しております。それから磁気。そして推進力に富んだ光線のエネルギー。もっと高級なものもあります。それら全てがキリストのマントの中で融合してお姿を覆いつつ、しかもお姿と玉座の輪郭を際立たせているのです。
『ベールの彼方の生活④』【逆さまの王冠は何を意味しているのでしょうか。なぜ“逆さま”になっているのでしょうか。】キリストは王冠の代りに例の赤と白の冠帯を付けておられました。そのうち冠帯が白一色となりキリストの純粋無垢の白さの中に融合してしまった時には王冠をお付けになられる→
『ベールの彼方の生活④』→事でしょう。その時マントが上げられ広げられ天界へ向けて浮上し、今度はそのマントが反転してキリストとその玉座の背景として広がり、それまでの光輝による模様はもはや見られなくなる事でしょう。
『ベールの彼方の生活④』又その時すなわち最終的な完成の暁に今一度お立ちになって総点検された時には、頭上と周囲に無数の王冠が、“逆さま”ではなく正しい形で見られる事でしょう。デザインは様々でしょう。が、それぞれの在るべき位置にあって、以後キリストがその救える勇敢なる大軍の→
『ベールの彼方の生活④』→先頭に立って率いて行く、その栄光への方向を指し示す事でしょう。 アーネル†
『ベールの彼方の生活④』訳者注―王冠がなぜ逆さまかについては答えられていないが、それがどうであれ、霊界の情景描写は次元が異なるので本来は全く説明不可能のはずである。アーネル霊も“とても出来ない”と再三断りつつも何とか描写しようとする。すると当然、地上的なものになぞらえて→
『ベールの彼方の生活④』→地上的な言語で表現しなければならない。しかもオーエンがキリスト教の概念しか持ち合わせていないためにそのなぞらえるものも用語も従来のキリスト教の色彩を帯びる事になる。例えば最後の部分で“最終的な完成の暁”とした部分は→
『ベールの彼方の生活④』→in that far Great Dayとなっていて、これを慣用的な訳語で表現すれば“かの遠い未来の最後の審判日”となるところである。が“最後の審判日”の真意が直訳的に誤解されている今日では、→
『ベールの彼方の生活④』→それをそのまま用いたのでは読者の混乱を招くので私なりの配慮をした。マント、玉座等々についても地上のものと同じものを想像してはならない事は言うまでもないが、さりとて他に言い表しようがないので、そのまま用いた。
『ベールの彼方の生活』3巻8章 暗黒界の探訪【7 救出】
『ベールの彼方の生活③』【7 救出】【1918年1月18日 金曜日】そこまで来てみると、はるか遠くの暗闇の中からやって来た者たちも加わって、吾々に付いてくる者の数は大集団となっていた。いつもなら彼らの間で知らせが行き交う事など滅多にない事なのですが、この度は吾々のうわさは→
『ベールの彼方の生活③』→よほどの素早さで鉱山中に届いたとみえて、その数は初め何百だったのが今や何千を数えるほどになっていた。今立ち止まっているところは、最初に下りて来た時に隙間からのぞき込んだ場所の下に当たる。その位置から振り返っても集団の前の方の者しか見えない。
『ベールの彼方の生活③』が、私の耳には地下深くの作業場にいた者がなおも狂ったようにわめきながら駆けてくる声が聞こえる。やがてボスとその家来たちの前を通りかかると急に静かになる。そこで私はまずボスに向かって言って聞かせた。「そなたの心の中をのぞいてみると、先ほど口にされた」→
『ベールの彼方の生活③』→「丁寧なお言葉に似つかわしいものが一向に見当たりませんぞ。が、それは今は構わぬ事にしよう。こうして天界より訪れる者は哀れみと祝福とを携えて参る。その大きさはその時に応じて異る。そこで吾々としてもそなたを手ぶらで帰らせる事にならぬよう、今ここで」→
『ベールの彼方の生活③』→「大切な事を忠告しておく事にする。すなわち、これよりそなたは望み通りにこれまでの生き方を続け、吾々は天界へと戻る事になるが、その後の成り行きを十分に心されたい。この者たちはそなたの元を離れて、そなたほどには邪悪性の暗闇の濃くない者の元で仕える」→
『ベールの彼方の生活③』→「事になるが、その後で、どうかこの度の出来事を思い返して、その意味するところを“とく”と吟味してもらいたい。そして、いずれそなたも、そなたの君主でもあらせられる方の、虚栄も残忍性も存在しない、芳醇な光の国より参った吾々に対する無駄な抵抗の末に、」→
『ベールの彼方の生活③』→「“ほぞ”をかみ屈辱を覚えるに至った時に、どうかこうした私の言葉の真意を味わって頂きたい」彼は地面に目を落とし黙したまま突っ立っていた。分かったとも分からぬとも言わず、不機嫌な態度の中に、スキあらば襲いかかろうとしながら、恐ろしさでそれも→
『ベールの彼方の生活③』→出来ずにいるようであった。そこで私は今度は群衆へ向けてこう語って聞かせた。「さて今度は諸君の事であるが、この度の諸君の自発的選択による災難の事は一向に案ずるに足らぬ。諸君は“より強き方”を選択したのであり、絶対に見捨てられる気遣いは無用である。」→
『ベールの彼方の生活③』→「ひたすらに忠実に従い、足をしっかりと踏まえて付いて来られたい。さすれば程なく自由の身となり、旅の終わりには光り輝く天界の高地へとたどり着く事ができよう」そこで私は少し間を置いた。全体を静寂がおおった。やがてボスが顔を上げて言った。「おしまいかな?」
『ベールの彼方の生活③』「ここでは以上で留めておこう。この坑道を出て大地へ上がってから、もっと聞きやすい場所に集めて、これから先の指示を与えるとしよう」「なるほど。この暗い道を出てからね。なるほど、その方が結構でしょうな」皮肉っぽくそう述べている彼の言葉の裏に企みがある事を→
『ベールの彼方の生活③』→感じ取った。彼は向きを変え、出入口を通り抜け、家来を引き連れて都市へ向かって進み始めた。吾々は脇へ寄って彼らを見送った。目の前を通りすぎて行く連中の中に私はキャプテンの姿を見つけ、この後の私の計略を耳打ちしておいた。彼は連中と一緒に鉱山を出た。
『ベールの彼方の生活③』そして吾々もその後に続いて進み、ついに荒涼たる大地に出た。出てすぐに私は改めて奴隷たちを集めて、みんなで手分けして町中の家という家、洞窟という洞窟を回ってこの度の事を話して聞かせ、一緒に行きたい者は正門の広場に集まるように言って聞かせよと命じた。
『ベールの彼方の生活③』彼らはすぐさま四方へ散って行った。するとボスが吾々にこう言った。「彼らが回っているあいだ、宜しかったら拙者たちと共に御身たちを拙宅へご案内致したく存ずるが、いかがであろう。御身たちをお迎えすれば拙者の家族も祝福が頂ける事になるのであろうからのお」
『ベールの彼方の生活③』「無論そなたも、そしてそなたのご家族にも祝福があるであろう。が、今ただちにという訳には参らぬし、それもそなたが求める通りとは参らぬ」そう言ってから吾々は彼に付いて行った。やがて都市のど真ん中と思われるところへ来ると、暗闇の中に巨大な石の構築物が→
『ベールの彼方の生活③』→見えてきた。住宅というよりは城という方が似つかわしく、城というよりは牢獄という方が似つかわしい感じである。周囲を道路で囲み、丘のように聳え立っている。が、いかにも不気味な雰囲気が漂っている。どこもかしこも、そこに住める魂の強烈な暗黒性を反映して、→
『ベールの彼方の生活③』→真実、不気味そのものである。住める者がすなわち建造者にほかならないのである。中に通され、通路とホールをいくつか通り抜けて応接間へ来た。あまり大きくはない。そこで彼は接待の準備をするので少し待ってほしいと言ってその場を離れた。彼が姿を消すと→
『ベールの彼方の生活③』→すぐに私は仲間たちに、彼の悪だくみが見抜けたかどうか尋ねてみた。大半の者は怪訝な顔をしていたが、2、3人だけ、騙されている事に気づいていた者がいた。そこで私は、吾々がすでに囚われの身となっている事、周りの扉は全部カギが掛けられている事を教えた。
『ベールの彼方の生活③』すると1人がさっき入って来たドアのところへ行ってみると、やはり固く閉ざされ、外から閂で締められている。その反対側は帝王の間の1つ手前の控えの間に通じるドアがあるが、これも同じく閂で締められていた。貴殿はさぞ、少なくとも14人のうちの何人かは、→
『ベールの彼方の生活③』→そんな窮地に陥って動転したであろうと思われるであろう。が、こうした使命、それもこの暗黒界の奥地へ赴く者は、長い間の鍛錬によって恐怖心というものには既に無縁となっている者、善の絶対的な力を、いかなる悪の力に対しても決して傷つけられる事なく、→
『ベールの彼方の生活③』→確実に揮う事のできる者のみが選ばれている事を忘れてはならない。さて吾々はどうすべきか―それは相談するまでもなく、すぐに決まった事でした。15人全員が手をつなぎ合い、波長を操作する事によって吾々の通常の状態に戻したのです。それまでは→
『ベールの彼方の生活③』→この暗黒界の住民を装って探訪するために、鈍重な波長に下げていた訳です。精神を統一するとそれが徐々に変化して身体が昇華され、周りの壁を難なく通過して正門前の広場に出て、そこで一団が戻ってくるのを待っておりました。ボスとはそれきり2度と会う事は→
『ベールの彼方の生活③』→ありませんでした。吾々の想像通り、彼は自分に背を向けた者たちの再逮捕を画策していたようです。そして、あの後すぐに各方面に大軍を派遣して通路を封鎖させ、逃亡せんとする者には容赦ない仕打ちをするように命じておりました。しかし、その後はこれといって→
『ベールの彼方の生活③』→お話すべきドラマチックな話はありません。衝突もなく、逮捕されてお慈悲を乞う叫びもなく、光明界からの援軍の派遣もありません。至って平穏のうちに、と言うよりは意気地のない形で終息しました。それは実はこういう次第だったのです。例の帝王の間において、→
『ベールの彼方の生活③』→彼らは急きょ会議を開き、その邸宅の周りに松明を立て、邸内のホールにも明りを灯して明るくしておいて、ボスが家来たちに大演説を打ちました。それから大まじめな態度で控えの間のドアの閂をはずし、使いの者が接待の準備ができた事を告げに吾々の(いるはずの)→
『ベールの彼方の生活③』→部屋へ来た。ところが吾々の姿が見当たらない。その事がボスの面目をまるつぶしにする結果となりました。全てはボスの計画と行動のもとに運ばれてきたのであり、それがことごとくウラをかかれたからです。家来たちは口々に辛辣な嘲笑の言葉を吐きながらボスの元を→
『ベールの彼方の生活③』→去って行きました。そしてそのボスは敗軍の将となって、ただ1人、哀れな姿を石の玉座に沈めておりました。以上の話からお気づきと思いますが、こうした境涯では悲劇と喜劇とが至る所で繰り返されております。しかし全ては“そう思い込んでいる”だけの偽りばかりです。
『ベールの彼方の生活③』全てが唯一絶対の実在と相反する事ばかりだからです。偽りの支配者が偽りの卑下の態度で臣下から仕えられ、偽りのご機嫌取りに囲まれて、皮肉と侮りのトゲと矢がこめられたお追従を無理強いされているのです。《原著者ノート》救出された群集はその後“小キリスト”→
『ベールの彼方の生活③』→に引き渡され、例のキャプテンを副官としてその鉱山からかなり離れた位置にある広々とした土地に新しい居留地(コロニー)をこしらえる事になる。鉱山から救出された奴隷のほかに、その暗黒の都市の住民の男女も含まれていた。
『ベールの彼方の生活③』実はこの後そのコロニーに関する通信を受け取っていたのであるが、そのオリジナル草稿を紛失してしまった。ただ、この後(第4巻の)1月28日と2月1日の通信の中で部分的な言及がある。