『ベールの彼方の生活④』8章 地球浄化の大事業【1 科学の浄化】【1919年3月12日 水曜日】さて、今やキリストの軍勢に加わった吾々はキリストの後について降下しました。幾つかの序列に従った配置についたのですが、言葉による命令を受けてそうしたのではありません。
『ベールの彼方の生活④』それまでの鍛錬によって、直接精神に感応する指示によって自分の持ち場が何であるか、何が要求されているかを理解する事ができます。それで、キリストとの交霊によって培われた霊感に従って各自が迷う事なくそれぞれの位置に付き、それぞれの役割に取りかかりました。
『ベールの彼方の生活④』ではここで、地球への行軍の様子を簡単に説明しておきましょう。地球の全域を取り囲むと吾々は、その中心部へ向けて一斉に降下して行きました。こういう言い方は空間の感覚―3次元的空間の発想です。吾々の大計画の趣旨を少しでも理解して頂くには、こうするより他に→
『ベールの彼方の生活④』→方法がないのです。キリストそのものは、既に述べましたように“偏在”しておりました。絶大な機能をもつ最高級の大天使から最下層の吾々一般兵士に至るまでの、巨万の大軍の1人1人の中に“同時に存在した”のです。自己の責務について内部から霊感を受けていても、→
『ベールの彼方の生活④』→外部においては整然とした序列による戦闘隊形が整えられておりました。最高の位置にいてキリストに最も近い天使から(キリストからの)命が下り、次のランクの天使がそれを受けてさらに次のランクへと伝達されます。その順序が次々と下降して、吾々はそれをすぐ上の→
『ベールの彼方の生活④』→ランクの者から受け取る事になります。その天使たちは姿も見えます。姿だけでしたら大体3つ上の界層の者まで見えますが、指図を受けるのは、よくよくの例外を除けば、すぐ上の界層の者からに限られます。さて吾々第10界の者がキリストの後について第9界までくると、→
『ベールの彼方の生活④』→吾々なりの活動を開始しました。まず9界全域にわたってその周囲を固め、徐々に内部へ向けて進入しました。するとキリストとその従者が吾々の界に到着された時と同じ情景がそこでも生じました。9界に比べて幾分かでも高い霊性を駆使して吾々は、その界の弱い部分を→
『ベールの彼方の生活④』→補強したり、歪められた部分を正常に修復したりしました。それが終了すると、続いて第8界へと向かうのでした。それだけではありません。9界での仕事が完了すると、ちょうど11界の者と吾々10界の者との関係と同じ関係が、吾々と9界の者との間に生じます。
『ベールの彼方の生活④』つまり9界の者は吾々10界の者の指図を受けながら、吾々の後について次の8界へ進みました。8界を過ぎると、8界の者は吾々から受けた指図をさらに次の7界の者へと順々に伝達していきます。かくしてこの過程は延々と続けられて、吾々はついに地球圏に含まれる→
『ベールの彼方の生活④』→3つの界層を含む大気の中へと入って行きました。そこまでは各界から参加者を募り、1人1人をキリストの軍勢として補充していきました。しかしここまで来ていったんそれを中止しました。と言うのは、地球に直接つながるこの3つの界層は、一応、1つの境涯として→
『ベールの彼方の生活④』→扱われます。なぜなら地球から発せられる鈍重な悪想念の濃霧に包まれており、吾々の周囲にもそれがひしひしと感じられるのです。黙示録にいう大ハルマゲドン(善と悪との大決戦―16・16)とは実にこの事です。吾々の戦場はこの3つの界層にまたがっていたのです。
『ベールの彼方の生活④』そしてここで吾々はいよいよ敵からの攻撃を受ける事になりました。その間も地上の人間はそうした事に一向にお構いなく過ごし、自分たちを取り巻く陰湿な霊気を突き通せる人間は極めて稀にしかいませんでした。が、吾々の活動が進むにつれてようやく霊感によって吾々の存在を→
『ベールの彼方の生活④』→感じ取る者、あるいは霊視力によって吾々の先遣隊を垣間見る者がいるとの話題がささやかれるようになりました。そうした噂を一笑に付す者もいました。吾々を取り巻く地上の大気に人間の堕落せる快楽の反応を感じ取る事ができるほどでしたから、多くの人間が→
『ベールの彼方の生活④』→霊的な事を嘲笑しても不思議ではありません。そこで吾々は、この調子では人間の心にキリストへの畏敬の念とその従僕である吾々への敬意が芽生えるまでには、よくよく苦難を覚悟せねばなるまいと見て取りました。しかしその事は別問題として、先を急ぎましょう。
『ベールの彼方の生活④』とは言え、吾々の作戦活動を一体どう説明すればよいのか迷います。もとより吾々は最近の地上の出来事について貴殿によく理解して頂きたいとは願っております。素晴らしい出来事、地獄さながらの出来事、さらには善悪入り乱れた霊の働きかけ―目に見えず、従って→
『ベールの彼方の生活④』→顧みられる事もなく、信じられる事もなく、しかし何となく感じ取られながら、激しい闘争に巻き込まれている様子をお伝えしたいのです。貴殿の精神の中の英単語と知識とを精一杯駆使して、それを“比喩的”に叙述してみます。それしか方法がないのです。
『ベールの彼方の生活④』が、せめてそれだけでも今ここで試してみましょう。
『ベールの彼方の生活④』地球を取り巻く3層の領域まで来てみて吾々は、まず第1にしなければならない仕事は悪の想念を掃討してしまう事ではなく、善の想念へ変質させる事である事を知りました。そこでその霧状の想念を細かく分析して最初に処理すべき要素を見つけ出しました。
『ベールの彼方の生活④』吾々より下層界からの先遣隊が何世紀も前に到着してその下準備をしてくれておりました。ここでは吾々第10界の者が到着してからの時期についてのみ述べます。地球の霊的大気には重々しくのしかかるような、どんよりとした成分がありました。
『ベールの彼方の生活④』実はそれは地上の物質科学が生み出したもので、いったん上昇してから再び下降して地上の物質を包み、その地域に住む人々に重くのしかかっておりました。最も、それはたとえ未熟ではあっても真実の知識から生まれたものである事は確かで、その中に誠実さが多重に→
『ベールの彼方の生活④』→混じっておりました。その誠実さがあったればこそ3つの界層にまで上昇できたのです。しかし所詮は物的現象についての知識です。いかに真実味があってもそれ以上に上昇させる霊性に欠けますから、再び物質界へと引き戻されるに決まっています。
『ベールの彼方の生活④』そこで吾々はこれを“膨張”という手段で処理しました。つまり吾々は言わばその成分の中へ“飛び込んで”吾々の影響力を四方に放散し、その成分を限界ぎりぎりまで膨らませました。膨張した成分はついに物質界の外部いっぱいにまで到達しました。
『ベールの彼方の生活④』が、吾々の影響力が与えた刺激はそこで停止せず、自らの弾みで次第に外へ外へと広がり、ついに物質界の限界を超えました。そのため物的と霊的との間を仕切っている明確な線―人間はずいぶんいい加減に仕切っておりますが―に凸凹が生じ始め、そしてついに、→
『ベールの彼方の生活④』→ところどころに小さなひび割れが発生しました―最初は小さかったというまでで、その後次第に大きくなりました。しかし大きいにせよ小さいにせよ、いったん生じたひび割れは2度と修復できません。たとえ小さくても、いったん堤防に割れ目ができれば、→
『ベールの彼方の生活④』→絶え間なく押し寄せていたまわりの圧力がその割れ目めがけて突入し、その時期を境に、霊性を帯びた成分が奔流となって地球の科学界に流れ込み、そして今なおその状態が続いております。これでお分かりのように、吾々は地上の科学を激変によって破壊する事のないように→
『ベールの彼方の生活④』→しました。過去においては一気に粉砕してしまった事が1度や2度でなくあったのです。確かに地上の科学はぎこちなく狭苦しいものではありますが、全体としての進歩にそれなりの寄与はしており、吾々もその限りにおいて敬意を払っていました。
『ベールの彼方の生活④』それを吾々が膨張作用によって変質させ、今なおそれを続けているところです。カスリーン嬢の援助を得て私および私の霊団が行っているこの仕事は今お話した事と別に関係なさそうに思えるでしょうが、実は同じ大事業の一環なのです。これまでの吾々の通信ならびに→
『ベールの彼方の生活④』→吾々の前の通信をご覧になれば、科学的内容のもので貴殿に受け取れる限りのものが伝えられている事に気づかれるでしょう。大した分量ではありません。それは事実ですが、貴殿がいくら望まれても、能力以上のものは授かりません。しかし、次の事実をお教えしておきましょう。
『ベールの彼方の生活④』この種の特殊な啓示のために貴殿よりもっと有能で科学的資質を具えた男性たち、それにもちろん少ないながらも女性たちが、着々と研さんを重ねているという事です。道具として貴殿よりは扱いやすいでしょう。その者たちを全部この私が指導している訳ではありません。
『ベールの彼方の生活④』それは違います。私にはそういう資格はあまりありませんので…。各自が霊的に共通性をもつ者のところへ赴くまでです。そこで私は貴殿の元を訪れている訳です。科学分野の事については私と同じ霊格の者でその分野での鍛錬によって技術を身につけている者ほどには→
『ベールの彼方の生活④』→お伝えできませんが、私という存在をあるがままにさらけ出し、また私が身につけた知識は全てお授けします。私が提供するものを貴殿は寛大なる心をもって受けて下さる。それを私は満足に思い、また嬉しく思っております。
『ベールの彼方の生活④』貴殿に神のより大きい恩寵のあらん事を。今回の話題については別の機会に改めて取り上げましょう。貴殿のエネルギーが少々不足してきたようです。 アーネル†

『ベールの彼方の生活④』【4 第10界へのご到着】【1919年3月11日 火曜日】吾々は第10界の高台に集合しました。人里離れた場所で、住居もまばらでした。建物はそのほとんどが中央の大塔との連絡のために使用されるものです。大塔は常時広大な地域にわたって眺望をきかせております。
『ベールの彼方の生活④』【それは、もちろん、あなたが前にお話になった大聖堂の住民になられる以前の話ですね?】そうです。(これから語る)ご降臨に際してキリストを拝したのは、ご降臨全体としてはずっと後半の事です。当時の私は既に第10界まで向上しており、その界の住民としての期間は→
『ベールの彼方の生活④』→かなり長期間に及んでいました。キリストがようやく10界の境界域に到達されたのは私が10界にいた時の事です。その時吾々は遠くの山脈に目をやっておりました。透き通るような光輝に映え、緑と黄金の色合いをしておりましたが、それに変化が生じ始めました。
『ベールの彼方の生活④』まず緑が琥珀色を通して見た赤いバラのように、赤みがかったピンクになりました。それが次第に光沢を深めていき、ついに山並み全体が純金の炎のごとく輝きました。その中で従者が先頭をきって右へ左へと動き、それが光の波となってうねるのが見えます。
『ベールの彼方の生活④』そのうちその従者の姿が吾々の方へ向けて進んでくるのが見え始めました。キリストから放たれる光の雲を背景として、その輪郭をえどるように位置しております。それぞれに燦爛たる光輝を放ち、雄大な容姿とそれに似合った霊力を具えておられます。男性と女性です。
『ベールの彼方の生活④』それに、そこここに、男女が一体となった天使がいます。2つにして1つ、1つにして2つ―この話はこれ以上は述べません。その神秘は貴殿には理解できないと思うからです。私も言語では表現しかねます。両性でもなければ中性(無性)でもありません。
『ベールの彼方の生活④』この辺で止めておきましょう。見るからに美しい存在です。男性というには柔和さが強すぎ、女性というには威厳が強すぎる感じが致します。その一団が吾々の界の環境条件に波長を合わせつつ進入し、全天空を光輝と荘厳で満たしたのです。吾々の足もとまで降りてこられたのでは→
『ベールの彼方の生活④』→ありません。上空を漂いつつ、あたかも愛のそよ風のごとく、それでいて力に溢れ、深遠にして神聖なる神秘への理解力を秘めた優しさと安らぎの雫を落として下さるのでした。その愛のしるしが降りそそがれる毎に吾々は、それまで理解の及ばなかった問題について啓発され、→
『ベールの彼方の生活④』→これから始まる仕事への力量を増す事になりました。天使の中には、大気が稀薄で吾々住民のほんの少数の者にしか永住困難な(その時は1人の姿も見当たらなかった)高い峰に位置をとっておられる方がいました。あるグループは1つの峰に、もう1つのグループは→
『ベールの彼方の生活④』→それより遠く離れた峰に、という具合に位置して、全域を円形に囲み、その区域内の山と山との間にさらに幾つかのグループが位置しておりました。そのように位置を構えてからお互いに器楽と声楽による音楽で呼びかけ合い、それが1大ハーモニーとなって全天空に→
『ベールの彼方の生活④』→響きわたりました。その音楽がまた新たな影響を吾々に及ぼしました。さきの愛の雫とは別に、あたかも安らかに憩う吾が子をさらに深き憩いへと誘う母の甘いささやきのごとき優しさを加えたのでした。やがて地平線の色調が深まって深紅色と黄金色とになりました。
『ベールの彼方の生活④』まだ黄金が主体でそれに深紅が混じっている程度でしたがこれでいよいよキリストが吾々の界のすぐそこまで来られた事を察知いたしました。そして、ついにお出ましになられました。そのお姿を現された時の様子、あるいはその顕現全体の壮観を私は一体どう表現すれば→
『ベールの彼方の生活④』→よいでしょうか。それを試みようとするだけで私は恐怖のあまり躊躇してしまうのです。それはあたかも宮廷の道化師に君主が戴冠に至る様子を演じさせ、その粗末な帽子でもって王冠を戴く様子を演じさせ、粗末な1本の棒切れでもって王笏を手にした様子を演じさせ、→
『ベールの彼方の生活④』→粗末な鈴でもって聖歌隊の音楽に似させる事を命じるようなもので、それは君主への不敬を働く事以外の何ものでもありません。今私が試みようとして躊躇するのはそれを恐れるからです。しかしもしその道化師が君主をこよなく尊敬しておれば、→
『ベールの彼方の生活④』→持てる力を総動員して人民に対する君主の鼓舞を演じ、同時にそのパロディ(粗末な模倣)が演技力と道具の不足のためにいかに実際とは似ても似つかぬものであるかを正直に述べるであろう。私もそれに倣って、謙虚さと真摯な意図を唯一の弁明として語ってみましょう。
『ベールの彼方の生活④』キリストを取り巻く光輝はますますその強さと広がりとを増し、ついに吾々の全てがその中に包み込まれてしまいました。私から最も遠く離れた位置にいる仲間の姿が明確に識別できるほどになりました。それでも全体の大気はバラ色がかった黄金色を帯びていました。
『ベールの彼方の生活④』吾々の身体もその清澄な霊力の奔流に洗われていました。つまりキリストは吾々全体を包むと同時に1人1人をも包んでおられたのです。吾々はまさにキリストその人とその個性の中に立ちつくし、吾々の中にもまわりにもキリストの存在を感じていたのです。
『ベールの彼方の生活④』その時の吾々はキリストの中に存在を保ちつつ、しかもキリストの一部となり切っておりました。しかし、それほどまで吾々にとって普遍的存在となっても、キリストは外形をまとって顕現なさろうとはしませんでした。私にはキリストが吾々の周辺や頭上にいらっしゃるのが→
『ベールの彼方の生活④』→分かるのです。それは言葉ではとても表現が困難です。身体を具えた局所的存在として1度にあらゆる場所におられるようであり、それでいて1つの存在なのです。そう表現するほかに良い表現が思い当たりません。それも、およそうまい表現とは言えません。
『ベールの彼方の生活④』私が思うに、キリストの全人格から全く同じものを感じ取った者は、吾々の中にはいなかったのではないでしょうか。私にとっては次に述べるようなお方でした。体格はとても大きな方で、人間2人ほどの高さがありました。“でっかいもの”という印象は与えません。
『ベールの彼方の生活④』“巨人”のイメージとは違います。吾々と変わるところのない“人間”なのですが、体格だけでなく内面性において限りない高貴さを具えておられます。頭部に冠帯を付けておられましたが、紅玉(ルビー)と黄金(ゴールド)が交互に混ざり合った幅の広い、ただのバンドです。
『ベールの彼方の生活④』両者が放つ光は融合する事なく、ルビーは赤を、ゴールドは黄金色を、それぞれに放っております。それが上空へ向けて上昇して天空いっぱいに広がり、虚空に舞う天使のローブに当たって一段とそのローブの美しさを増すのでした。お身体は全身の素肌が輝いて見えましたが、→
『ベールの彼方の生活④』→といって一糸もまとっていないのでもありません。矛盾しているようですが、私が言わんとしているのは、まずその全身から放たれる光彩がその地域のすみずみにまで至り、全てを輝きの中に包みます。するとその一部が吾々が抱いている畏敬の念というスクリーンに反射し、→
『ベールの彼方の生活④』→それが愛の返礼となってキリストのもとに返り、黄金の鎧のごとくお身体を包みます。その呼応関係は吾々にとってもキリストにとってもこの上なく快いものでした。キリストは惜しげもなくその本来の美しさの奥の院の扉を開いて下さる。そこで吾々はその儀式にふさわしい→
『ベールの彼方の生活④』→唯一の衣服(畏敬の愛念)を脱ぎ、頭を垂れたままそれをキリストのお身体にお掛けする。そして優しさと崇敬の念に満ちた霊妙なる愛を込めてキリストへの絶対的信頼感を表明したのでした。しかしそれ以前にもすでにキリストの栄光を垣間見ておりましたから(6章1その他)
『ベールの彼方の生活④』キリストの本来の力はそれでもなお控えめに抑えられ、いつでも出せる態勢にある事を知っておりました。キリストは何ひとつ身にまとわれなくても、吾々配下の軍勢からの(畏敬の念という)贈り物を金色(こんじき)の鎖帷子(くさりかたびら)としてまとっておられたのです。
『ベールの彼方の生活④』贈り物とはいえ所詮は全てキリストのものである以上、キリストから頂いたものをお返ししたにすぎません。(ローブで隠されているはずの)おみ足がはだけておりました。と言うのは、吾々からの贈り物は吾々が頂いたものには及ばず、その足りない分だけローブの長さが→
『ベールの彼方の生活④』→短くなり、足首のところで終わっていたのです。そのキリストがここの一団、そこの一団と次々と各軍団のもとをまわられる時のお顔はいやが上にも厳粛にして哀れみに満ちておりました。それでいて最初に姿を現された中心的位置を離れているようにも見えないのです。
『ベールの彼方の生活④』そのお顔の表情を私は、広げられた巻きものを見るように、明瞭に読み取る事ができました。その厳粛さは、口にするのも恐れ多き天上界―罪と無縁ではないまでも知識として知るのみで体験として知る事のないキリスト界から携えて来られたものであり、→
『ベールの彼方の生活④』→一方哀れみはかのカルバリの丘での体験から来ておりました。その2つが神にして人の子たるキリストの手によって天と地の中間において結ばれているのです。キリストは手をかざして遠く高き界層の天使へと目を向け、罪多き人間のために何を為さんとしているかを→
『ベールの彼方の生活④』→見届けながら、地球よりその罪の雫を自らの額に落とされ、その陰影によってお顔を一段と美しくされます。かくして崇高なる厳粛さと悲しみとが1つに融合し、そこから哀れみが生じ、以来、神的属性の1つとなったのです。さらには愛がありました。
『ベールの彼方の生活④』与えたり与えられたりする愛ではありません。全てを己れの胸の中に収め、全てのものと一体となる愛。その時のキリストは吾々を包み込み、自らの中に収められたのでした。また頭上には威厳が漂っておりました。それはあたかも全天の星を腕輪(ブレスレット)に、→
『ベールの彼方の生活④』→惑星を従えた太陽を指輪(シグネット)にしてしまうほどの、大いなる威厳でした。このようにしてキリストはお出ましになり、このような姿をお見せになったのです。それは今では過去のものとなりました。が、今なおその存在感は残り続けております。
『ベールの彼方の生活④』吾々が今拝するキリストはその時のキリストとは異なりますが、見ようと思えばいつでもそのシーンを再現し臨場感を味わう事ができます。これも神秘の1つです。私は次のように考えております―主は地上へと去って行かれた。が、そのマントのすそが伸びて、通過していった→
『ベールの彼方の生活④』→界層の全てを光で包まれた。さらに下へ下へと進まれ、ついにかの地球を取り囲む毒気に満ちた濃霧の如き大気の中へと入って行かれた…。その威厳に満ちたご尊顔に哀れみの陰を見ている吾々の心に主を哀れむ情が湧くのを禁じ得ませんが、同時に敬愛と崇拝の念も→
『ベールの彼方の生活④』→禁じ得ません。なぜなら、汚れなき至純のキリストにとって、その恐怖の淵は見下ろすだに戦慄を覚えさせずにおかない事ですが、自ら担われた使命にしりごみされる事はありませんでした。平静に、そして不敵の心をもって、浄化活動のための闘いに向かわれました。
『ベールの彼方の生活④』そのお姿を拝して吾々はキリストとともにある限り必ず勝利を収めるものと確信致しました。キリストはまさしく空前絶後のリーダーです。
『ベールの彼方の生活④』真の意味でのキャプテンであり、その御心に母性的要素すら窺えるほどの優しさを秘めながらも、なお威厳あふれるキャプテンであられます。 アーネル†

『ベールの彼方の生活④』【3 お迎えのための最後の準備】【1919年3月10日 月曜日】以上のような経緯は地上的に表現すれば“永い歳月”に及んでいる事を知っておいて頂きたい。その間、吾々には吾々なりの為すべき事がありました。地上でも、1つの改革が進行している間も一般大衆には→
『ベールの彼方の生活④』→それぞれの日常生活があります。吾々もそれと同じでした。しかし吾々の生活全体を支配している“思い”―何に携わっていても片時も心から離れなかったのは、キリストの降臨と、そのための上層界の態勢づくりの事でした。いずこへ赴いてもそれが窺えました。
『ベールの彼方の生活④』時には仲間が集まってキリストの接近による光輝の変化の事を細かく語り合う事もありました。特に上層界から使者が訪れ、吾々の界層の環境に合わせた身体をまとい、山の頂上とか中空に立って集合を命じた時はほとんど全員が集まりました。指定の場所に集まった者は→
『ベールの彼方の生活④』→何事であろうと期待に胸をふくらませるのでした。前回に述べたのもその1つでした。しかしそうした時以外はいつもの生活に勤しみ、時には領主からお呼びが掛かって将来の仕事のための特別の鍛錬を受け、また時には特別の使命を授かって他の界層へ赴いたりしていました。
『ベールの彼方の生活④』他の界層へ赴いている間は連絡関係がふだんより緻密さを増します。急な用事で帰還命令が出された時に素早くそれをキャッチするためです。そうしたふだんの体験にも貴殿に興味のありそうなもの、ためになるものがいろいろとあるのですが、それは今は措いておき、→
『ベールの彼方の生活④』→将来その機会が巡ってくれば語る事にしましょう。さし当たっての私の目的はキリストその人の降臨について語る事です。吾々キリストの軍勢の一員として選ばれた者は、例の天使の塔の聳える風致地区内に集合しました。待機しながらその塔の頂上にのっているヤシの葉状の→
『ベールの彼方の生活④』→王冠を見上げると、1人また1人と天使の姿が現れ、全部で大変な数になりました。ひざまずいている者、座している者、立っている者、例のレース細工によりかかっている者など、様々でした。他の場所からその位置へ移動してきたのではありません。吾々の見ている前で、→
『ベールの彼方の生活④』→吾々の視力に映じる姿をまとったのです。最初は見えなかったのが見える形をまとったのです。見えるようになると、どの天使も同じ位置に留まっていないであちらこちらへと動き回り、対話を交えておりました。霊格の高い、かつ美しい方ばかりです。
『ベールの彼方の生活④』同じ光景を前にも叙述した事があります。顔ぶれはかなり変わっておりましたが、同じ天使も多く見かけました。さて全天使が揃うと新たな現象が見え始めました。それはこうです。王冠の中に初めて見るものが現れました。十字架の形をしており、中央から現れて上昇しました。
『ベールの彼方の生活④』そのヨコ棒の片側に最後に到着した天使が立ち、その左手をタテ棒の上部にあてています。他の天使に比べて1まわり光輝が広がっています。身体も十分に吾々の界の環境条件に合わせ終わると左手をお上げになり、吾々を見下ろされながら祝福を与えて下さいました。
『ベールの彼方の生活④』それから鈴の音のような鮮明な声で話しかけられました。大きな声ではありませんが、はるか下方に位置する吾々ならびにその地区一帯に立ち並ぶ者全員にまで届きました。遠くの丘や広い草原にいる者もあれば、屋上にいる者、湖のボートに乗っている者もいました。
『ベールの彼方の生活④』さてその天使はこう語られました。「このたび貴殿たちを召集したのは、いよいよこの界へお近づきになられた主キリストについてのメッセージを伝え、ご到着とご通過に際してその意義を理解し、祝福を受け損なう事のないよう準備をして頂くためである。」→
『ベールの彼方の生活④』→「貴殿たちはこれまで幾度か主をご覧になっておられるが、このたびのお出ましはそれとは全く異なるものである事をまず知られたい。これまでは限られた目的のために限られた必要性に従って限られた側面を顕現してこられた。が、このたびは、その全てではないが、」→
『ベールの彼方の生活④』→「これまでをはるかに凌ぐ王威をまとわれてお出ましになられる。これまでは限られた所用のために降りてこられた。このたびは大事業への父なる大神の勅命を体して来られるのである。これはただならぬ大事業である。地球は今や貴殿らによる援助の必要性が切迫している。」→
『ベールの彼方の生活④』→「それ故、主が通過されるに際し貴殿ら1人1人が今の自分に最も欠けているものをお授け下さるようお願いするがよい。それによってこれより始まる仕事に向けて体調を整え、完遂のための体力を増強する事ができるであろう。万遺漏なきを期さねばならない事は」→
『ベールの彼方の生活④』→「言うまでもないが、さりとて主のご威光を過度に畏れる事も控えねばならない。主は貴殿らの必要なるものを携えて来られる。主ご自身はさような必要性はない。貴殿らのために燦爛たる光輝をまとわれてお出ましになるのである。その光輝の全てが貴殿らのためである。」→
『ベールの彼方の生活④』→「それ故、遠慮なくそれに身を浸し、その磁気的エネルギーに秘められている力と高潔さとを己れのものとなさるがよい。では、これより貴殿らの思うがままに少人数でグループを作り、私が今述べた事について語り合ってもらいたい。私が述べた言葉はわずかであるが、」→
『ベールの彼方の生活④』→「それを貴殿らが膨らませてほしい。行き詰まった時は私の仲間がその解釈の手助けに参るであろう。そうする事によって主が間もなくお出ましになられた時に慌てずに済むであろうし、この界を通過される間にその目で見、その耳で聞き、その肌で感じて、」→
『ベールの彼方の生活④』→「さらに理解を深める事になるであろう。」話が終わるとすぐ吾々は言われた通りにしました。例のヤシの葉状の王冠の中にいた天使たちはその間も姿をずっと消される事はありませんでした。それどころか、吾々の中に降りてこられて必要な援助を与えて下さいました。
『ベールの彼方の生活④』その時の魂の安らぎの大きかった事。おかげでキリストがいつ通過されてもよいまでに全員がそれなりの準備を整える事ができました。キリストの生命力の尊い流れから汲み取って吾々のものとする事ができるのです。
『ベールの彼方の生活④』それはキリストの内的叡智と決意の洗礼を受ける事に他なりません。以上がキリストの降臨までに開かれた数々の集会の最後となりました。終わるとキリストの霊との一体感をしみじみと味わい、静寂と充足感の中にそのご到着をお待ちしました。 アーネル†

『ベールの彼方の生活④』【2 先発隊の到着】【1919年3月7日 金曜日】十重二十重と上方へ延びている天界の界層を見上げつつ、吾々は今や遅しと(キリストの降臨を)お待ちしておりました。その天界の連なる様子はあたかも巨大なシルクのカーペットが垂れ広がっているごとくで、→
『ベールの彼方の生活④』→全体にプリーツ(ひだ)とフラウンス(ひだべり飾り)が施された様子は天界の陽光を浴びてプリズムのごとく輝くカスケード(階段状の滝)を思わせます。プリーツの1つ1つが界層であり、フラウンスの1つ1つが境界域であり、それが上下の2つの界をつなぎ、→
『ベールの彼方の生活④』→それぞれの特色ある色彩を1つに融合させておりました。その上方からきらめく波がその巨大なマントを洗うように落ちてきます。色彩が天上的光輝を受けて、あたかも宝石のごとくきらめきます。その宝石の1つ1つが天使であり、それぞれに天上的光輝の美しさを一身に受け、→
『ベールの彼方の生活④』→そして反射しているのです。そう見ているうちに、吾々の視力の届く限りの1番高い位置の色彩がゆっくりと変化し始めました。本来の色彩をとどめつつも別の要素、新たなきらめきがあふれております。それを見て吾々はキリストならびに従者の一行がようやく吾々の→
『ベールの彼方の生活④』→視界の範囲まで降下してこられた事を知りました。シルクのプリーツの1つがすぐ下のプリーツへ重なり、あたかも次のプリーツに口づけし、そのプリーツが同じように頭を垂れて頬を次のプリーツの肩にそっと触れていくのにも似た光景は、何とも言えない美しさでした。
『ベールの彼方の生活④』以上が吾々が見たキリスト降臨の最初の様子です。吾々には突き透せない光輝の中から今やっとお出ましになり、一歩一歩地球へ近づきつつもなおその間に広大な距離を控え、各界にその霊力を放散しつつ降りて来られるようでした。流れ落ちる光の波はついに吾々の界より→
『ベールの彼方の生活④』→2、3手前の界層の境界域に打ち寄せてまいりました。そこまで来てさらに一段と理解がいきました。吾々が見ているのはキリストの近衛兵の大連隊が光輝を発しつつ前進してくる様子だったのです。しかしキリストのお姿はまだ見えませんでした。
『ベールの彼方の生活④』その途方もない霊力と栄光の顕現にただただ感嘆と高揚にしばし浸っているうちに、今度は吾々自身の内部から、愛と慈悲の念と今まさに始まらんとしている大事業に全力を投入しようとの決意の激発による魂の興奮を覚え始めました。それは同時にいよいよキリストが近くまで→
『ベールの彼方の生活④』→お出でになられた事を告げるものでした。いよいよお出でになられた時の様子、さらには吾々の界を通過して下界へ降りて行かれた時の様子それはとても言葉では尽くせません。あまりに荘厳すぎるのです。が、私にできる限り何とか表現してみましょう。
『ベールの彼方の生活④』魂の興奮は次第に度合を増し、吾々はお出ましの瞬間を見届けんものと、身を乗り出し首を伸ばして見つめました。まず目に入ったのは側近の随行者の先遣隊でした。その一行は吾々にお迎えの準備を促す意味がありました。と言うのは、この度のお出ましはこれまで私が→
『ベールの彼方の生活④』→たびたび叙述した顕現とは異なるのです。大事業の完遂のために幾千万とも知れぬ大軍を率いて、その本来の威力と栄光のままにお出ましになられるのです。吾々もそのご威光を少しでも多く摂取する必要があり、それにはゆっくりとした過程で順応しなければなりません。
『ベールの彼方の生活④』そこでまず先発隊が派遣され、道中、必要とみた者には叡智を授け、ある者には祝福を与え、またある者には安らぎの口づけをするのです。いよいよその一行が悠揚迫らぬ態度で吾々のところまで来られました。いずれ劣らぬ尊い霊格を具えられた方ばかりです。
『ベールの彼方の生活④』上空を飛翔される方々と吾々の間を通り抜けて行かれる方々とがありました。そして吾々の誰かに目が行き、一瞬のうちにその足らざるところを察知して、必要なものを授け、そして先を急がれました。上空を行かれる方から指示が出される事もありました。
『ベールの彼方の生活④』全体が協調的態勢で行動し、それが吾々にとって大きな教訓となりました。【あなたご自身は何かありましたか。】その一行の中には女性が混じっておりました。それは吾々の霊団も同じです。地上の戦争にも女性が派遣されるでしょう。吾々も女性ならではの救助の仕事のために→
『ベールの彼方の生活④』→女性を引き連れておりました。その時私は仲間から離れて後方にいました。というのは、従者の一行に話しかけたい者が大勢の仲間とともに前の方へ出て来たからです。するとその私のところへ一対の男女が近づいて来られ、にっこりと微笑まれて双方が私の手を片方ずつ→
『ベールの彼方の生活④』→握られました。男性の方は私よりはるかに体格があり、女性の方は男性より少し小柄でした。いずれ劣らぬ端整な容姿と威厳を具えておられますが、そうした従者のいずれもがそうであるように、素朴な謙虚さと愛を感じさせました。男性の方はもう一方の手を私の肩に置いて→
『ベールの彼方の生活④』→こう言われるのです― “アーネル殿、貴殿の事を吾々2人はよく存じ上げております。吾々は間断なく生じる仕事においていつも互いの資質を出し合って協力し合っている間柄です。実はこの度この界を通り過ぎる事になって2人して貴殿をお探ししておりました。”→
『ベールの彼方の生活④』→“このご婦人から貴殿に申し上げたい事があるようです。かねてよりその事を胸に秘めて機会をうかがっておられました。”さてその婦人は実にお美しい方で、男性の光輝と相まった眩しさに私はただただ狼狽するばかりで黙って見回すしか為す術がありません。
『ベールの彼方の生活④』すると婦人はその握りしめていた手をさらに強く握られながら幾分高く持ち上げられました。続いて婦人の美しい頭にのっていた冠が私の目の前に下りて来ました。私の手に口づけをされたのです。そしてしばしばその態勢を保たれ、私は婦人のしなやかな茶色がかった髪に→
『ベールの彼方の生活④』→目を落としました。まん中で分けられた髪が左右に垂れ、黄金のヘアバンドを付けておられました。私は一言も口が利けませんでした。高揚性と至純な聖(きよ)さに溢れた喜びが私を圧倒してしまったのです。それはとても筆舌に尽くせるものではありません。
『ベールの彼方の生活④』それから私はおもむろに男性の方へ目をやって私の戸惑いの気持を訴えました。すると婦人がゆっくりと頭を上げ私の顔を見つめられ、それと時を同じくして男性の方がこう言われたのです― “アーネル殿、このご婦人は例の少女ミランヌの祖母に当たられる方です。”→
『ベールの彼方の生活④』→そう言われて婦人の方へ目を向けると、婦人はにっこりとされてこう言われたのです。「お礼を申し上げます、アーネル様。あなた様は私が遠く離れ過ぎているために出来なかった事をして下さいました。実はその子が窮地におかれているのを見て私はあなたへ向けて」→
『ベールの彼方の生活④』→「送念いたしました。あなたは私の願いに敏感に反応して下さいました。間もなくその子も自分からお礼を申し上げに参る事でしょうが、私から一言お礼をと思いまして…」そう言って私の額に口づけをされ、優しく私の身体をご自分のお身体の方に引き寄せられました。
『ベールの彼方の生活④』それからお2人そろって笑顔でその場を立ち去られました。その時の強烈な印象はその後いささかも消えやらず、霊的には常に接触が取れているように思います。今もそれを感じます。貴殿はミランヌなる少女が何者であろうかと思っておられる。実は私もその時そう思ったのです。
『ベールの彼方の生活④』最もその少女との係わり合いについてはよく覚えております。古い話ではありません。ある時仕事をしていると、貴殿も体験があると思いますが、誰かが自分に注意を向けているような感じがしてふと仕事の手を休めました。そしてじっと受身の気持でいると、声ではなくて、→
『ベールの彼方の生活④』→ある種の衝動を覚え、すぐさまそれに従いました。私は急いで地上へ向かいました。たどり着くとまたまた外部からの力で、今まさに地上を去って霊の世界へ入ろうとしている若い女性のところへ一直線に導かれていきました。最初は何のためなのかよく分かりませんでした。
『ベールの彼方の生活④』ただそこに臨終を迎えた人体が横たわっているというだけです。が、間もなく分かりました。すぐ脇に男の霊が立っていて、その女性の霊が肉体から離れるのを待ちかまえております。その男こそ地上でずっと彼女に災いをもたらしてきた霊で、彼女が肉体から離れると→
『ベールの彼方の生活④』→すぐに邪悪の道へ引きずり込もうと待ちかまえていたのでした。その後の事をかいつまんで言えば、彼女が肉体から出ると私は身を挺してその男が近づくのをさえぎり、男の近づけない第3界の安全な場所へ運んだという事です。今ではさらに2界層向上しております。
『ベールの彼方の生活④』その間ずっと私が保護し介抱してきました。今でも私が保護者となってあげている霊の1人です。これでお分かりでしょう。お2人にお会いして、あの時の要請の出どころが分かり、同時にその要請に応えて私が期待通りにお役に立っていた事を知って、とても嬉しく思った次第です。
『ベールの彼方の生活④』そうした喜びは地上にいる間は理解できないでしょう。しかしイエスは施物分配の話と、首尾よく使命を全うした者を待ち受ける歓迎の言葉の中に、その事をすでに暗示しておられます。こう言っておられます― →
『ベールの彼方の生活④』→“よくぞ果たされた。そなたたちの忠誠心を嬉しく思う。さ、私とともに喜びを分かち合おう。”(※)私もイエスとともに喜びを分かち合う光栄に浴したのです。ささやかながら私が首尾よくそれを全うして、今こうして一層大きな喜びの中に新たな大事業に参加する事を→
『ベールの彼方の生活④』→許されたのです。多分ご婦人の言葉はキリストがお述べになる言葉そのものだったのだと確信しました。キリストの喜びとは常に“献身の喜び”なのです。  アーネル†
『ベールの彼方の生活④』(※マタイ25・21。この部分は聖書によって用語や文章に若干の違いが見られるが、そのいずれもこの通信の文章とはかなり異なっている。アーネル霊は霊界の記録を見ているのであるから、この方が実際のイエスの言葉に近いのであろう―訳者)

『ベールの彼方の生活④』【7章 天界の大軍、地球へ】【1 キリストの軍勢】【1919年3月6日 木曜日】天界の大草原のはるか上空へ向けてキリストの軍勢が勢揃いしておりました。上方へ向けて位階と霊格の順に1段また1段と階段状に台地(テラス)が連なり、私も仲間の隊員とともに、→
『ベールの彼方の生活④』→その上方でもなく下方でもなく、ほぼ中間に位置するあたりの台地に立っておりました。雲なす軍勢の1人1人がそれぞれの任務を帯びていたのです。この度の戦いに赴くための準備が進行するうちに吾々に様々な変化が生じておりました。その1つは地球圏の上層界と→
『ベールの彼方の生活④』→前回の話に出た他の複数の惑星の経綸者の双方から霊力の援助を受けて吾々の磁気力が一段と増し、それにつれて視力も通常の限界を超えて広がり、それまで見る事を得なかった界層まで見通せるようになった事です。その目的はエネルギーの調整―吾々より上の界と下の界の→
『ベールの彼方の生活④』→動きが等しく見えるようになる事で言いかえれば視力の焦点を自在に切り換える事ができるようになったという事です。これで一層大きな貢献をするためにより完璧な協調体制で臨む事になります。下の者は上の者の光輝と威力を見届ける事ができて勇気を鼓舞される→
『ベールの彼方の生活④』→事にもなり、さらに、戦いにおいて指揮と命令を受けやすくもなります。私はその視力でもって上方の光景と下方の光景、そしてあたり一面を見渡して、そこに見た驚異に畏敬の念を抱かずにはいられませんでした。それまで数々の美と驚異を見ておりましたが、→
『ベールの彼方の生活④』→その時に見た光景ほど驚異に満ちたものはありませんでした。地球の方角へ目をやると、様々な色彩が幾つもの層を成して連なっています。それは私の界と地上界との間の10の界層を象徴する色彩で、これより下降すべく整列している軍勢の装束から放たれているのでした。
『ベールの彼方の生活④』その下方、ちょうどその軍勢の背景となる位置に、霧状のものが地球を取り巻いているのが見えました。そのどんよりとして部厚く、あたかも濃いゼリー状の物質を思わせるものがところどころで渦を巻いている中を、赤色と暗緑色の筋や舌状のものがまとわりついているさまは、→
『ベールの彼方の生活④』→邪悪の化身である蛇が身の毛もよだつ地獄の悪行に奔走しているさまを彷彿とさせ、見るからに無気味なものでした。その光景に吾々は別にしりごみはしませんでした。恐怖心はいささかも抱きませんでした。それどころか、愛と僚友意識の中で互いに手を取り合い、→
『ベールの彼方の生活④』→しばし静粛な思いに浸りました。これからの吾々の旅はあの無気味な固まりと立ち向かい、しかもそれを通過しなければならないのです。目指す地球はその中にあるのです。何としてでも突き抜けて地球まで至らねばなりません。陰鬱極まる地球は今こそ吾々の援助を→
『ベールの彼方の生活④』→必要としているのです。その無気味な光景を見つめている私の脳裏に次のような考えが浮かびました―“人間はよくもあの恐ろしい濃霧の中にあって呼吸し生きていられるものだ”と。吾々自身について言えば、吾々の仕事は、既に述べた通り、質の転換作用によって→
『ベールの彼方の生活④』→少しでも多く吾々の組織体の中にそれを摂り入れていく事でした。どうしても消化不可能なものはさらに地獄の奥へと追いやり、言うなれば自然崩壊を待つほかはありません。大変な“食事”だと思われるでしょう。しかも大して“美味”ではありません。それは確かですが、→
『ベールの彼方の生活④』→それほどの軍勢で、しかもキリストをリーダーとして、吾々はきっと成就できるとの確信がありました。続いて吾々は向きを変えて、今度は上方へ目をやりました。すると幾重にも連なる台地に光り輝く存在が、ある者は立ち並び、ある者は悠然と動き回っているのが見えました。
『ベールの彼方の生活④』その台地の1つ1つが天界の1界であり、それがパノラマ式に巨大な階段状に連なって延々と目も眩まんばかりに上方へと伸び、ついに吾々の視力では突き通せない光輝の中へと突入し、その頂上が視界から消えました。その光輝を突き抜けて見届けうるのは吾々よりはるか上方の、→
『ベールの彼方の生活④』→光輝あふれる界層の存在のみでした。吾々にとってはただの“光の空間”であり、それ以外の何ものにも見えませんでした。それでも、可能な限りの無数の輝く存在を目にする事だけでも吾々に大いなる力を与えてくれました。
『ベールの彼方の生活④』最も近くの界層の存在でさえ何と素晴らしかった事でしょう。吾々より下層の者は見た事もない色調をした光輝を放つ素材でできた長衣(ローブ)に身を包んでおられました。さらに上層界の存在はゴースのごときオーラに包まれ、身体はその形も実体も麗しさにあふれ、→
『ベールの彼方の生活④』→その1体1体が荘厳な1篇の詩であり、あるいは愛と憧憬の優しい歌であり、優雅にして均整の取れた神であり、同格の神々とともに整然たる容姿を完全に披露して下さっておりました。その位置を貴殿なら多分“はるか彼方”と表現するところでしょう。
『ベールの彼方の生活④』確かにはるか彼方ではありました。が吾々の目にはその形体と衣装が―その形体を包む光輝を衣装と呼ぶならば―全体と同時に細部まで見る事ができました。しかし、それとてまだ中間の界層の話です。そのまた先には吾々の視力の及ばない存在が無数に実在していたのです。
『ベールの彼方の生活④』その事は知っておりました。が、知ってはいても見る事はできません。吾々の霊格にとってはあまりにも崇高すぎたのです。そしてその頂上には吾らがキリストが君臨している事も分かっておりました。その光景を見つめながら吾々仲間はこう語り合ったものです― →
『ベールの彼方の生活④』→“目の当たりにできる光景にしてこの美しさであれば、吾らがキリストの本来の栄光はいかばかりであろうか”と。しかし吾々の感嘆もそこまでで、それから先へ進む事はできず、一応そこで打ち切りました。と言うのも、間もなくそのキリスト自ら吾々の指揮のために→
『ベールの彼方の生活④』→降りて来られる事が判っていたからです。その折には地球へ向けて下降しつつ、各界の住民の能力に応じた波長の身体をまとわれるので、吾々の視力にも映じる可視性を身につけておられる事も知っておりました。天界の大軍の最高位にあらせられるキリスト自らその大軍の中を→
『ベールの彼方の生活④』→通り抜けて、一気に地球の大気圏の中に身を置かれるという事だったのです。然り、然り。キリストほどのリーダーはいません。天使ならびに人類を導く者としてキリストに匹敵する霊は、神格を具えた無数の存在の中にさえ見出す事はできません。私は厳粛なる気持で→
『ベールの彼方の生活④』→そう断言します。と申しますのも、天界の経綸に当たる神々といえども、その力量は一列平等ではなく、地上の人間と同じくその一柱一柱が独自の個性を表現しているのです。平凡な天使の部類に属する吾々もそうであり、さらに神聖さを加えた階級の天使もそうであり、→
『ベールの彼方の生活④』→さらにその上の階級の天使もそうであり、かくして最高級の大天使ともなれば父なる神の最高の美質を表現しておりますが、それにも各々の個性があるのです。そうした多種多様な神々の中にあっても、指導者としての資質においてキリストに匹敵する者はいないと申上げるのです。
『ベールの彼方の生活④』私が先ほど語り合ったと述べた仲間たちも同じ事を申しておりました。その事については改めて述べるつもりでおります。その時は以上の私の断言が正しいか否かがはっきりする事でしょう。  アーネル†

『ベールの彼方の生活④』【7 人類の数をしのぐ天界の大軍】【1919年3月5日 水曜日】これまでお話した事は天界の大事業について私が知り得た限り、そして私自身が体験した限りを叙述したものです。それを大ざっぱに申し上げたまでで、細かい点は申し上げておりません。
『ベールの彼方の生活④』そこで私はこれより、吾々が地上へ向かって前進しそして到着するまでの途中でこの目で見た事柄をいくつかお伝えしようと思います。が、その前に申し上げておきたい事があります。それは―作戦活動としての吾々の下降は休みなく続けられ、またそれには抗し難い勢いが→
『ベールの彼方の生活④』→ありました。1度も休まず、また前進への抵抗が止んだ事も1度もありませんでした。吾々霊団の団結が崩された事も1度もありませんでした。下層界からのいかなる勢力も吾々の布陣を突破する事はできませんでした。しかし個々の団員においては必ずしも確固不動とは→
『ベールの彼方の生活④』→言えませんでした。地上の概念に従って地上の言語で表現すれば、隊員の中には救助の必要のある者も時おり出ました。救助されるとしばし本来の住処で休息すべく上層界へと運ぶか、それとも天界の自由な境涯においてもっと気楽で激しさの少ない探検に従事する事になります。
『ベールの彼方の生活④』それというのも、この度の大事業は地球だけに向けられたものではなく、地上に関係した事が占める度合いは全体としては極めて小さいものでした。吾々が参加した作戦計画の全体ですら、物的宇宙の遠い片隅の小さな1点にすぎませんでした。
『ベールの彼方の生活④』大切なのは(そうした物的規模ではなく)霊的意義だったのです。既に申し上げた通り地上の情勢は地球よりかなり遠く離れた界層にも影響を及ぼしておりましたが、その勢いも次第に衰えはじめており、たとえその影響を感じても、一体それは何なのか、どこから来るのか→
『ベールの彼方の生活④』→分からずに困惑する者もいたほどです。しかし他の惑星の住民はその原因を察知し、地球を“困った存在”と考えておりました。確かに彼らは地球人類より霊的には進化しています。ですから、この度の問題をもしも吾々のようにかつて地上に生活して地上の事情に→
『ベールの彼方の生活④』→通じている者が処理せずにいたら、恐らくそれらの惑星の者が手がけていた事でしょう。霊的交信の技術を自在に使いこなすまでに進化している彼らは既に審議会においてその問題を議題にしておりました。彼らの動機は極めて純粋であり霊的に高度なものです。
『ベールの彼方の生活④』しかし、手段は彼らが独自に考え出すものであり、それは多分、地球人類が理解できる性質のものではなかったでしょう。そのまま適用したら恐らく手荒にすぎて、神も仏もあるものかといった観念を地球人に抱かせ、今こそ飛躍を必要とする時期に2世紀ばかり後戻りさせる→
『ベールの彼方の生活④』→事になっていたでしょう。過去2千年ばかりの間に地上人類を導き、今日なお導いている人々の苦難に心を痛められる時は、ぜひその事もお考えになって下さい。しかし、彼らもやがて、その問題をキリスト自らが引き受けられたとの情報がもたらされました。
『ベールの彼方の生活④』すると即座に彼らから、及ばずながらご援助いたしましょうとの申し出がありました。キリストはそれを受け入れられ、言うなれば予備軍として使用する事になりました。彼ら固有のエネルギーが霊力の流れにのって送られてきて吾々のエネルギーが補強されました。
『ベールの彼方の生活④』それで吾々は大いに威力を増し、その分だけ戦いが短くて済んだのでした。これより細かいお話をしていく上においては、ぜひそうした事情を念頭において下さい。これからの話は、過去の出来事の原因の観点から歴史を理解する上で参考になる事でしょう。
『ベールの彼方の生活④』将来人間はもっと裏側から歴史を研究するようになり、地上の進歩の途上における様々な表面上の出来事を、これまでとはもっと分かり易い形でつなぎ合わせる事ができるようになるでしょう。人間が吾々霊的存在とその働きかけを軽く見くびっているのが不思議でなりません。
『ベールの彼方の生活④』と言うのは、人類は地球上に広く分布して生活しており、その大半はまだ無人のままです。全体から言うとまだまだ極めて少数です。それに引きかえ吾々は地球の全域を取り囲み、さらに吾々の背後には天界の上層界にまで幾重にも大軍が控えております。それは大変な数であり、→
『ベールの彼方の生活④』→またその1人ひとりが地上のいかなる威力の持ち主よりも強烈な威力を秘めているのです。ああ、いずれ黎明の光が訪れれば人類も吾々の存在に気づき、天界の光明と光輝を見出す事でしょう。そうなれば地球も虚空という名の草原をひとり運行(たび)する侘びしさを→
『ベールの彼方の生活④』→味わわなくてすむでしょう。あたりを見渡せば妖精が楽しげに戯れている事を知り、もはや孤独なる存在ではなく、甦れる無数の他界者と一体であり、彼らは遙か彼方の天体上― →
『ベールの彼方の生活④』→夜空に見えるものもあれば地上からは見えないものもありますが―の生活者と結びつけてくれている事を知るでしょう。
『ベールの彼方の生活④』しかしそれは低き岸辺の船を外洋へと押し出し、天界へ向けて大いなる飛躍をするまでは望めない事でしょう。  アーネル†

『ベールの彼方の生活④』【6 下層界の浄化活動】【1919年3月3日 月曜日】大事業への参加を求められたあと私が最初に手がけたのは下層界の浄化活動でした。太古においては下層の3界(※)が地球と密接に関係しており、また指導もしておりました。その逆も言えます。
『ベールの彼方の生活④』すなわち地球のもつ影響力を下層界が摂り入れていった事も事実です。これは当然の事です。なぜなら、そこの住民は地球からの渡来者であり、地球に近い界ほど直接的な影響力を受けていた訳です。(※いわゆる“4界説”に従えば“幽界”に相当すると考えていいであろう―訳者)
『ベールの彼方の生活④』死の港から上陸すると、ご承知の通り、指導霊に手引きされて人生についてより明確な視野をもつように指導されます。そうする事によって地上時代の誤った考えが正され、新しい光が受け入れられ吸収されていきます。しかしこの問題で貴殿にぜひ心に留めておいて頂きたいのは→
『ベールの彼方の生活④』→地上生活にせよ天界の生活にせよ、強圧的な規制によって縛る事は決してないという事です。自由意志の原則は神聖にして犯すべからざるものであり、間断なく、そして普遍的に作用しております。実はこの要素、この絶対的な要素が存在している事による1つの結果として→
『ベールの彼方の生活④』→霊界入りした者の浄化の過程において、それに携わる者にもいつしかある程度の誤った認識が蔓延するようになったのです。霊界へ持ち込まれる誤った考えの大半は“変質”の過程を経て有益で価値ある要素に転換されていましたが、全部とはいきませんでした。
『ベールの彼方の生活④』論理を寄せ付けず、あらゆる束縛を拒否するその自由意志の原理が、地上的な気まぐれな粒子の下層界への侵入を許し、それが大気中に漂うようになったのです。永い年月のうちにそれが蓄積しました。それは深刻な割合にまでは増えませんでした。そしてそのまま→
『ベールの彼方の生活④』→自然の成り行きに任せてもよい程度のものでした。が、当時においては、それは“まずい”事だったのです。その理由はこうです。当時の人類の発達の流れは下流へ、外部へ、物質へ、と向かっていました。それが神の意志でした。すなわち神はご自身を物的形態の中に→
『ベールの彼方の生活④』→細かく顕現していく事を意図されたのです。ところがその方向が下へ向かっていたために勢いが加速され、地上から侵入してくる誤謬の要素が、それを受け入れ変質させていく霊的要素をしのぐほどになったのです。そこで吾々が地上へ下降していくためには下層界を浄化する→
『ベールの彼方の生活④』→必要が生じました。地上への働きかけをさらに強化するための準備としてそれを行ったのです。【なぜ“さらに強化する”のですか。】地球はそれらの界層からの働きかけを常に受けているのですが、それはその働きかけを強めるために行った―つまり、→
『ベールの彼方の生活④』→輪をうまく転がして谷を無事に下りきり、今度は峰へ向けて勢いよく上昇させるに足るだけの弾みをつける事が目的でした。それはうまく行き、今その上昇過程が勢いよく始まっております。結局吾々には樽の中のワインにゼラチン状の化合物の膜が果たすような役割を→
『ベールの彼方の生活』→果たしたのです。知識欲にあふれ一瞬の油断もなくがっちりと手を取り合った雲なす大軍がゆっくりと下降していくと、そうした不純な要素をことごとく圧倒して地球へ向けて追い返しました。それが過去幾代にもわたって続けられたのです(この場合の“代”は3分の1世紀―訳者)
『ベールの彼方の生活④』間断なくそして刃向う者なしの吾々の働きによって遠き天界と地上との感覚が縮まるにつれて、その不純要素が濃縮されていきました。そしてそれが次第に地球を濃霧の如く包みました。圧縮されていくその成分は場所を求めて狂乱状態となって押し合うのでした。
『ベールの彼方の生活④』騒乱状態は吾々の軍勢がさらに地球圏へ接近するにつれて一段と激しくそして大きく広がり、次第に地上生活の中に混入し、ついにはエーテルの壁を突き破って激流の如く侵入し、人間世界の組織の一部となっていきました。見上げれば、その長期にわたって上昇し続けていた→
『ベールの彼方の生活④』→霧状の不純要素をきれいに取り除かれた天界が、その分だけ一段と明るさを増し美しくなっているのが分かりました。下へ目をやればその取り除かれた不純なる霧が―いかがでしょう、この問題をまだ続ける必要がありましょうか。
『ベールの彼方の生活④』地上の人間でも見る目をもつ者ならば、吾々の働きかけが過去2、3世紀の間に特に顕著になっているのを見て取る事ができるでしょう。今日もし当時の変動の中に吾々の働きを見抜けないという人がいれば、それはよほど血のめぐりの悪い人でしょう。
『ベールの彼方の生活④』実はその恐ろしい勢力が大気層―地上の科学用語を拝借します―を突き破って侵入した時、吾々もまたすぐそのあとについてなだれ込んだのでした。そして今こうして地上という最前線にいたり、ついに占領したという次第です。
『ベールの彼方の生活④』しかし、ああ、その戦いの長くかつ凄まじかった事といったらありませんでした。そうです。長く、そして凄まじく、時として恐ろしくさえありました。しかし人類の男性をよき戦友として、吾々は首尾よく勝利を得ました―女性もよき戦友であり、吾々はその気概を見て、→
『ベールの彼方の生活④』→喜びの中にも驚嘆の念を禁じ得ませんでした。そうでした。そうでした。地上の人類も大いに苦しい思いをされました。それだけにいっそう人類の事を愛しく思うのです。しかし忘れないで頂きたい。その戦いにおいて吾々が敵に深い痛手を負わせたからには、味方の方も→
『ベールの彼方の生活④』→少なからず、そして決して軽くない痛手を受けたのです。人類と共に吾々も大いなる苦しみを味わったという事です。そして人類の苦しむ姿を近くで目の当たりにするにつけ、吾々がともに苦しんだ事をむしろ嬉しく思ったのです。吾々が地上の人々を助けたという事が→
『ベールの彼方の生活④』→吾々のためにもなったという事です。人類の窮状を見た事が吾々のために大いに役立ったのです。【(第1次)世界大戦の事を言っておられるのですか。】そのクライマックスとしての大戦についてです。既に述べた通り、吾々の戦いは過去何代にもわたって続けられ、→
『ベールの彼方の生活④』→次第にその勢いを募らせておりました。そのために多くの人が尊い犠牲となり、様々な局面が展開しました。今その全てを細かく述べれば恐らく貴殿はそんな事まで…と意外に思われる事でしょう。少しだけ挙げれば、宗教的ならびに神学的分野、芸術分野、政治的ならびに→
『ベールの彼方の生活④』→民主主義の分野、科学の分野―戦争は過去1千年の間に大変な勢いで蔓延し、ほとんど全てのエネルギーを奪い取ってしまいました。しかし吾々は勝利を収めました。そして今や太陽をいっぱいに受けた峰へ向けて天界の道を揃って歩んでおります。
『ベールの彼方の生活④』かの谷間は眼下に暗く横たわっております。そこで吾々は杖をしっかりと手にして、顔を峰へ向けます。するとその遠い峰から微かな光が射し、それが戦争の傷跡も生々しい手足に当たると、その傷が花輪となって吾々の胸を飾り、腕輪となって手首を飾り、→
『ベールの彼方の生活④』→破れ汚れた衣服が美しい透し細工のレースとなります。何となれば吾々の傷は名誉の負傷であり、衣服がその武勲を物語っているからです。そして吾々の共通の偉大なるキャプテンが、その戦いの何たるかを理解し傷の何たるかもむろん理解しておられる、キリストに→
『ベールの彼方の生活④』→他ならないのです。では私より祝福を。今夜の私はいささかの悲しみの情も感じませんが、私にとってその戦いはまだ沈黙の記憶とはなっておりません。私の内部には今なお天界の鬨(かちどき)の声が上がる事があり、また当時の戦いを思い出して吾々の為にした事、→
『ベールの彼方の生活④』→またそれ以上に、吾々が目にした事、そして地上の人々のために流した涙の事を思い起こすと、思わず手を握りしめる事すらあるのです。もちろん吾々とて涙を流したのです。1度ならず流しました。何度も流しました。と言うのも、吾々には陣頭に立って指揮される→
『ベールの彼方の生活④』→キリストのお姿が鮮明に見えても、人間の粗末な視力は霧が重くかかり、たとえ見えても、ほんの薄ぼんやりとしか見えませんでした。それがかえって吾々の哀れみの情を誘ったのでした。しかしながら、自然にあふれ出る涙を通して、貴殿らの天晴れな戦いぶりを驚きと→
『ベールの彼方の生活④』→少なからぬ畏敬の念をもって眺めたものでした。よくぞ戦われました。美事な戦いぶりでした。吾々は驚きのあまり立ち尽くし、互いにこう言ったものでした―吾々と同じく地上の人たちも同じ王、同じキャプテンの兵士だったのだと。
『ベールの彼方の生活④』そこで全ての得心がいき、なおも涙を流しつつ喜び、それからキリストの方へ目をやりました。キリストは雄々しく指揮しておられました。そのお姿に吾々は貴殿らに代って讃仰の祈りを捧げたのでした。  アーネル†

『ベールの彼方の生活④』【5 物質科学から霊的科学へ】【1919年2月28日 金曜日】人類が目覚めの遅い永い惰眠を貪る巨大な寝室から出て活発な活動の夜明けへと進み、未来において到達すべき遠い界層をはじめて見つめた時にも、やはり神々による廟議は開かれていたのでした。
『ベールの彼方の生活④』その会議の出席者は多分、例のアトランティス大陸の消滅とそれよりずっと後の奮闘の時代―人類の潜在的偉大さの中から新たな要素がこれより先の進化の機構の中で発現していく産みの苦しみを見ていた事でしょう。後者は同じ高き界層からの働きかけによって→
『ベールの彼方の生活④』→物質科学が発達した事です。人間はそれをもって人類が蓄積してきた叡智の最後を飾るものと考えました。しかし、その程度の物的知識を掻き集めたくらいでおしまいになるものではありません。大いなる進化は今なお続いているのです。
『ベールの彼方の生活④』目的成就の都市は地上にあるのではありません。はるか高遠の彼方にあるのです。人間は今やっと谷を越え、その途中の小川で石ころを拾い集めてきたばかりです。今度はそれを宝石細工人のもとへ持って行かねばなりません。そういう時期もいずれは到来します。
『ベールの彼方の生活④』細工人はそれを堂々たる王冠を飾るにふさわしい輝きと美しさにあふれたものに磨き上げてくれる事でしょう。しかし細工人はその低き谷間にはいません。今人類が登りかけている坂道にもいません。光をいっぱいに受けた温い高地にいるのです。
『ベールの彼方の生活④』そこには王とその廷臣の住む宮殿があります。しかし王自身は無数の廷臣を引き連れて遙か下界へ降りられ、再び地上をお歩きになっている。ただし、この度はそのお姿は(地上の人間には)見えません。吾々はその後について歩み、こうした形で貴殿にメッセージを送り、→
『ベールの彼方の生活④』→王より命じられた仕事の成就に勤しんでいるところです。【では、アーネルさん、キリストは今も地上にいらっしゃり、あなたをはじめ大勢の方たちはそのキリストの命令を受けていると理解してよろしいでしょうか。】キリストからでないとしたら、他に誰から受けるのでしょう。
『ベールの彼方の生活④』今まさに進行中の大変な霊的勢力に目を向けて、判断を誤らぬようにして下さい。地上の科学は勝利に酔い痴れたものの、その後さらに飛躍してみれば、5感の世界だけの科学は根底より崩れ、物的尺度を超えた世界の科学へと突入してしまいました。
『ベールの彼方の生活④』皮肉にも物的科学万能主義がそこまで駆り立てたのです。今やしるしと不思議(霊的現象の事。ヨハネ4・48―訳者)が様々な形で語られ、かつてはひそひそ話の中で語られたものが熱弁をもって語られるようになりました。周囲に目をやってご覧なさい。
『ベールの彼方の生活④』地上という大海の表面に吾々無数の霊が活発に活動しているその笑顔が映って見える事であろう。声こそ発しなくても確かに聞こえるであろう。姿こそ見えなくても、吾々の指先が水面にさざ波を立てているのが見えるであろう。人間は吾々の存在が感じ取れないと言う。
『ベールの彼方の生活④』しかし吾々の存在は常に人間世界を覆い人間のこしらえるパイ1つ1つに指を突っ込んでは悦に入っております。中のプラムを摘み取るような事はしません。絶対に致しません。むしろ吾々の味付けによって一段とおいしさを増しているはずです。
『ベールの彼方の生活④』あるとき鋳掛屋がポーチで食事をしたあと、しろめ製の皿をテーブルに置き忘れたまま家に入って寝た。暗くなって1匹の年取ったネコが現れてその皿に残っていた肉を食べた。それからネコはおいしい肉の臭いの残る皿にのって、そこを寝ぐらにしようとした。
『ベールの彼方の生活④』しろめの硬さのために寝心地が悪く、皿の中でぐるぐると向きを変えているうちに、その毛で皿はそれまでになくピカピカに光り輝いた。翌朝、しろめの皿の事を思い出した鋳掛屋が飛び出してみると、朝日を受けてその皿が黄金のように輝いている。
『ベールの彼方の生活④』「はて、不思議な事があるもの…」彼はつぶやいた。「肉は消えているのに皿は残っている。肉が消えたという事は“盗っ人”の仕業という事になるが、皿が残っていて、その上ピカピカに光っているところをみると、そいつは“良き友”に違いない。しかし待てよ。」
『ベールの彼方の生活④』「そうだ。たぶんこういう事だろう―肉は自分が食べてしまっていたんだ。そして星の事かなんか、高尚な事を考えながら1杯やっているうちに、自分のジャーキン(革製の短い上着)で磨いていたんだ」
『ベールの彼方の生活④』【この寓話の中のネコがあなたという訳ですね?】そのネコの毛1本という事です。ほんの1本にすぎず、それ以上のものではありません。  アーネル†
『ベールの彼方の生活④』訳者注―この寓話の部分はなぜか文法上にも構文上にも乱れが見られ細かい部分が読み取れないので、大体のあらすじの訳に留めておいた。要するに人類は各分野での進歩・発展を誇るが、肝心な事は霊の世界からのインスピレーションによって知らないうちに指導され→
『ベールの彼方の生活④』→援助されているという事であろう。

『ベールの彼方の生活④』【4 キリスト界】【1919年2月27日 木曜日】【これまでお述べになった事は全て第11界で起きた事と理解しております。そうですね、アーネルさん?】ザブディエル殿がお示しになった界層の数え方に従えばそうです。私には貴殿の質問なさりたい事の主旨が目に見えます
『ベールの彼方の生活④』精神の中で半ば形を整えつつあります。取りあえずそれを処理してから私の用意した話に移ります。既にお話したとおり、この大事業の構想は第11界で生まれたのではなく、はるかに上層の高級界です。キリスト界については既に読まれたでしょう。そこが実在界なのですが、→
『ベールの彼方の生活④』→語る人によって様々に理解されております。そもそも界層というのは内情も境界も、地上の思想的慣習によって厳密に区分けする事は不可能なのです。しかし語るとなるとどうしても区分けし分類せざるを得ません。吾々も貴殿の理解を助ける意味でそうしている訳ですが、→
『ベールの彼方の生活④』→普遍的なものでない事だけは承知しておいて下さい。吾々も絶対的と思っている訳ではありません。表面的な言い回しの裏にあるものに注目して下されば、数々の通信にもある種の共通したものがある事を発見される事でしょう。界は7つあって7番目がキリスト界だと→
『ベールの彼方の生活④』→言う人がいます。それはそれで結構です。ザブディエル殿と私は第11界までの話をしました。これまでの吾々の区切り方でいけばキリスト界は7の倍に1を加えた数となるでしょう。つまりこういう事です。吾々の2つの界が7界説の1界に相当する訳です。
『ベールの彼方の生活④』7界説の人も第7界をキリストのいる界とせずに、キリストが支配する界層の最高界をキリスト界とすべきであると考えます。吾々の数え方でいけば第14界つまり7の倍の界が吾々第11界の居住者にとって実感をもって感識できる最高の界です。
『ベールの彼方の生活④』その界より上の界がどうなっているかについての情報を理解する事ができないのです。そこで吾々は、キリストがその界における絶対的支配者である以上は、キリスト自身はそれよりもう1つ上の界の存在であらねばならないと考えるのです。
『ベールの彼方の生活④』その界のいずこにもキリストの存在しない場所は1かけらも無いのです。という事は、もしもその界全体がキリストの霊の中に包まれているとするならば、キリストご自身はさらにその上にいらっしゃらねばならない事になります。それで7界の倍に1界を加える訳です。
『ベールの彼方の生活④』以上がこれまでに吾々が入手した情報に基づいて推理しうる限界です。そこで吾々はこう申し上げます。数字で言えばキリスト界は第15界で、その中に下の14界の全てが包含される、と。吾々に言えるのはそこまでで、その第15界がどうなっているのか、境界がどこにあるのか→
『ベールの彼方の生活④』→についても断言は控えます。よく分からないのです。しかし限界がどこにあろうと―限界があるとした上での話ですが―それより下の界層を支配する者に霊力と権能とが授けられるのはその界からである事は間違いありません。そこが吾々の想像の限界です。
『ベールの彼方の生活④』そこから先は“偉大なる未知”の世界です。ただ、あと1つだけ付け加えておきましょう。ここまで述べてもまだ用心を忘れていないと確信した上で申しましょう―私は知ったかぶりをしていい加減な憶測で申し上げないように常に用心しております。それはこういう事です。
『ベールの彼方の生活④』私がお話した神々による廟議と同じものが各世紀ごとに召集されているという事です。その際、受け入れる用意のある者のために啓示がなされる時期についての神々の議決は、地球の記録簿の中に記されております。
『ベールの彼方の生活④』かくして物的宇宙(コスモス)の創造計画もその廟議において作製されていた訳です。  アーネル†

『ベールの彼方の生活④』【3 神々による廟議(びょうぎ)】【1919年2月26日 水曜日】―その“尊き大事業”というのは何でしょうか。(訳者注―前回の通信との間に一週間の空白があるのに、いかにもすぐ続いているような言い方をしているのは多分その前に前回の通信についての)→
『ベールの彼方の生活④』→(簡単なやりとりがあったか、それともオーエンがそのように書き改めたかのいずれかであろう)それについてこれから述べようと思っていたところです。貴殿も今夜は書き留める事ができます。この話題はここ何世紀かの出来事を理解して頂く上で大切な意味をもっております。
『ベールの彼方の生活④』まず注目して頂きたいのは、その大事業は例の“天使の塔”で計画されたものではないという事です。これまでお話した界層よりさらに高い境涯において幾世紀も前からもくろまれていた事でした。いつの世紀においても、その頭初に神界において審議会が催されると→
『ベールの彼方の生活④』→聞いております。まず過去が生み出す結果が計算されて披露されます。遠い過去の事は簡潔な図表の形で改めて披露され、比較的新しい世紀の事は詳しく披露されます。前世紀までの2、3年の事は全項目が披露されます。それらがその時点で地上で進行中の出来事との→
『ベールの彼方の生活④』→関連性において検討されます。それから同族惑星の聴聞会を催し、さらに地球と同族惑星とを一緒にした聴聞会を催します。それから審議会が開かれ、来るべき世紀に適用された場合に他の天体の経綸に当たっている天使群の行動と調和するような行動計画に関する結論が下されます
『ベールの彼方の生活④』悠揚せまらぬ雰囲気の中に行われるとの事です。【“同族惑星”という用語について説明してください】これは発達の程度においても進化の方向においても地球によく似通った惑星の事です。つまり地球によく似た自由意志に基づく経路をたどり、知性と霊性において→
『ベールの彼方の生活④』→現段階の地球に極めて近い段階に達している天体の事です。空間距離において地球に非常に近接していると同時に、知的ならびに霊的性向においても近いという事です。【その天体の名前をいくつか挙げていただけますか。】挙げようと思えば挙げられますが、やめておきます。
『ベールの彼方の生活④』誰でも知っている事を知ったかぶりをして…などと言われるのはいやですから。貴殿の精神の中にそれにピッタリの成句(フレーズ)が見えます―to play to the gallery(大向うを喜ばせる、俗受けをねらう)。最もそれだけが理由ではありません。
『ベールの彼方の生活④』同じ太陽域の中にありながら人間の肉眼に映じない天体もあるからです。それもその中に数えないといけません。さらには太陽域の一番端にあって事実上は他の恒星の引力作用を受けていながら、程度においては地球と同族になるものも、少ないながらあります。
『ベールの彼方の生活④』それから太陽域の中―【太陽系の事ですか。】太陽系、そうです―その中にあってしかも成分が(肉眼に映じなくても)物質の範疇に入るものが2つあります。現在の地上の天文学ではまだ問題とされておりませんが、いずれ話題になるでしょう。
『ベールの彼方の生活④』しかしこんな予言はここでは関係ありません。そうした審査結果がふるいに掛けられてから、いわば地球号の次の航海のための海図が用意され、ともづなが解かれて外洋へと船出します。【それらの審議会においてキリストはいかなる位置を占めておられるのでしょうか。】
『ベールの彼方の生活④』それらではなく“その”と単数形で書いて下さい。審議会はたった一つだけです。が会合は世紀ごとに催されます。出席者は絶対不同という訳ではありませんが、変わるとしても2、3エオン(※)の間にわずかな変動があるだけです。
『ベールの彼方の生活④』(※EON 地質学的時代区分の最大の期間で、億単位で数える―訳者)【王(キング)ですか。】そう書いてはなりますまい。違います。その審議会が開かれる界層より下の階層においては王ですが、その審議会においては“主宰霊”です。これは私が得た知識から→
『ベールの彼方の生活④』→述べているにすぎません。実際に見た訳ではなく、私および同じ界の仲間が上層界を通して得たものです。これでお分かりでしょうか。もっと話を進めましょうか。【どうも有難うございました。私なりに分かったように思います。】それは結構な事です。
『ベールの彼方の生活④』そう聞いてうれしく思います。それというのも、私はもとより、私より幾らか上の界層の者でも、その審議会の実際の様子は象徴的にしか理解されていないのです。私も同じ手法でそれを貴殿に伝え、貴殿はそれに満足しておられる。結構に思います。
『ベールの彼方の生活④』では先を続けさせて頂きます。以上でお分かりの通り、審議会の主宰霊たるキリスト自らが進んでその大事業を引き受けられたのです。それは私と共にこの仕事に携わっている者たちの目から見れば、そうあってしかるべき事でした。すなわち、いかなる決断になるにせよ→
『ベールの彼方の生活④』→最後の責任を負うべき立場の者が自ら実践し目的を成就すべきであり、それをキリストがおやりになられたという事です。今日キリストはその任務を帯びて地上人類の真只中におられ、地球へ降下された後、既にその半ばを成就されて、方向を上へ転じて父の古里へと→
『ベールの彼方の生活④』→向かわれています。この程度の事で驚かれてはなりません。もっと細かい事をお話する予定でおります。以上の事は雄牛に突き刺した矢印と思って下さい。抜き取らずにおきましょう。途中の多くの脇道にまぎれ込まずに無事にゴールへ導くための目印となるでしょう。
『ベールの彼方の生活④』脇道にもいろいろと興味ぶかい事があり、勉強にもなり美しくもあるのですが、今の吾々にはそれは関係ありません。私がお伝えしたいのは地球に関わる大事業の事です。他の天体への影響の事は脇に置いて、地球の事に話題をしぼりましょう。少なくとも地球を主体に→
『ベールの彼方の生活④』→話を進めましょう。ただ一つだけ例外があります。貴殿は地球以外の天体について知りたがっておられる様子なので、そのうちの火星について述べておきましょう。最近この孤独な天体に多くの関心が寄せられて、科学者よりも一般市民の間で大変な関心の的となっております。
『ベールの彼方の生活④』そうですね?【そうです。ま、そう言っても構わないでしょう。】その原因は反射作用にあります。まず火星の住民の方から働きかけがあったのです。地球へ向けて厖大な思念を送り、地球人類がそれに反応を示した―という程度を超えて、もっと深い関係にあります。
『ベールの彼方の生活④』そうした相互関係が生じる原因は地球人類と火星人類との近親関係にあります。天文学者の中には火星の住民の事を親しみを込めて火星人(マーシャン)と呼んでいる人がいますが、火星人がそれを聞いたら可笑しく思うかも知れません。吾々もちょっぴり苦笑を誘われそうな→
『ベールの彼方の生活④』→愉快さを覚えます。火星人を研究している者は知性の点で地球人よりはるかに進んでいるように言います。そうでしょう?【そうです。おっしゃる通りです。そう言ってます。】それは間違いです。火星人の方が地球人より進んでいる面もあります。しかし少なからぬ面において→
『ベールの彼方の生活④』→地球人より後れています。私も訪れてみた事があるのです。間違いありません。いずれ地上の科学もその点について正確に捉える事になるでしょう。その時はより誇りに思って然るべきでしょう。吾々がしばしば明言を控え余計なおしゃべりを慎むのはそのためです。
『ベールの彼方の生活④』同じ理由でここでも控えましょう。【火星を訪れた事があるとおっしゃいましたが…】火星圏の者も吾々のところへ来たり地球を訪れたりしております。こうした事を吾々は効率よく行っております。私は例の塔においてキリストの霊団に志願した一人です。
『ベールの彼方の生活④』他にもいくつかの霊団が編成されその後もさらに追加されました。幾百万とも知れぬ大軍の全てが各自の役目について特訓を受けた者ばかりです。その訓練に倣って今度は自ら組織した霊団を特訓します。各自に任務を与えます。私にとっては地球以外の天体上の住民について→
『ベールの彼方の生活④』→その現状と進歩の様子を知っておく事が任務の遂行上不可欠だったのです。大学を言うなれば次々と転校したのもそのためでした。とても勉強になりました。その一つが“聖なる山”の大聖堂であり、もう一つは“五つの塔の大学”であり、火星もその一つでした。
『ベールの彼方の生活④』【あなたの任務は何だったのか、よろしかったら教えて下さい。】“何だったのか”と過去形をお使いになられました。私の任務は現在までつながっております。今夜、ここで、こうして貴殿と共にそれに携わっております。
『ベールの彼方の生活④』その進展のためのご援助に対してお礼申し上げます。  アーネル†