—–四章4
『ベールの彼方の生活①』
【炎の馬車 一九一三年十月二一日 火曜日】カストレル様の都市についてはまだまだお話しようと思えば幾らでもあるのですが、他にも取り挙げたい問題がありますので後一つだけ述べて、それから別の話題へ移りたいと思います。宮殿のある地域に滞在していた時の事です。
『ベールの彼方の生活①』
そこへよく子供たちが遊びに来ました。その中には私の例の死産児も含まれておりました。他の子供たちはその子の母親つまり私と仲間の四人と会うのが楽しみだったようです。
『ベールの彼方の生活①』
そして私たちがそれまで訪れた土地の話、特に子供の園や学校の話をすると飽きる事なく一心に聞き入るのでした。来る時はよく花輪を編んでお土産に持って来てくれたのですが、実はそのウラにはゲームで一緒に遊んでもらおうという下心があったのです。
『ベールの彼方の生活①』
もちろんよく一緒に遊んであげました。その静かで平和な土地で可愛い幼児とはしゃぎ回っている楽しい姿は容易に想像して頂けると思います。ある時、あなたも子供の頃遊んだ事のあるジョリーフーパーゲームに似た遊びで、子供たちが考え出したゲームに興じておりました。
『ベールの彼方の生活①』
大抵私たち五人が勝つのですが、そのうち私たちと向かい合っている子供たちが突然歌うのをやめて立ち尽くし、私たちの頭越しに遠くを見つめているのです。振り向くと、その空地の端の並木道の入口のところに他でもない、カストレル様のお姿がありました。
『ベールの彼方の生活①』
笑みを浮かべておられます。風采からは王者の威厳が感じられますが、その雰囲気には力と叡智が渾然となった優しさと謙虚さがあるために見た目には実に魅力がありつい近づいてみたくなるものがあります。こちらへゆっくりと歩を進められ、それを見た子供たちが走り寄りました
『ベールの彼方の生活①』
するとその一人一人の頭を優しく撫でてあげておられます。やがて私たちのところまで来られると「ご覧の通りガイドなしで一人でやってまいりましたよ。どこにおられるかはすぐに判りますから。ところで悪いのですが、遊びを中断して頂かねばならない用事が出来たのです。―」
『ベールの彼方の生活①』
「あなた方もぜひ出席して頂きたい儀式がもうじき催されます。こちらにおられる“小さい子供さん”はそのままゲームを続けなさい。あなた方“大きい子供さん”は私と一緒に来て下さい」とユーモラスにおっしゃるのです。
『ベールの彼方の生活①』
すると子供たちは私たちの方へ駆け寄ってきて嬉しそうに頬にキスをして、用事が終ったらまたゲームをしに来てね、と言うのでした。それからカストレル様の後について頭が届きそうなほど枝の垂下がったトンネル状の並木道を進み、―
『ベールの彼方の生活①』
やがてそこを通り抜けると広い田園地帯が広がっていました。そこでカストレル様は足を止めてこうおっしゃいました。「さて、ずっと向うを見てごらんなさい。何が見えますか。」
『ベールの彼方の生活①』
私たち五人は口を揃えて、広いうねった平野と数々の建物、そしてさらにその向うには長い山脈のようなものが幽かに見えます、と答えました。「それだけですか」とカストレル様が聞かれます。私たちが目立ったものとしてはそれだけですと答えると、「そうでしょうね。―」
『ベールの彼方の生活①』
―それがあなた方の現在の視力の限界なのでしょうね。いいですか。私の視力はあなた方よりは発達していますから、その山脈のさらに遠くまで見えます。よく聞いて下さいよ。これから私の視力に映っているものを述べていきますから。
『ベールの彼方の生活①』
その山脈の向うに一段と高い山脈が見え、さらにその向うにそれより高い山頂が見えます。建物が立っているものもあれば何もないものもあります。私はあの地方に居た事があります。
『ベールの彼方の生活①』
ですからあそこにも、ここから見ると小さく見えますが、実はこの都市を中心とした私の領土全体と同じくらいの広さの平野と田園地帯がある事を知っております。私は今その中の一つの山の頂上近くのスロープを見つめております。地平線ではありません。
『ベールの彼方の生活①』
あなた方の視力の範囲を超えたところに位置しており、そこにこの都市よりも遥かに広くて豊かで壮大な都市が見えます。その中央へ通じる道の入口がちょうど我々の方を向いており、その前は広い平坦地になっております。今の通路を騎馬隊と四輪馬車の列が出てくるところです。
【過去コメ】日の出直後の3000mオーバーの稜線、岩の上にライチョウちゃんのオス発見☆距離を保って動かずにいると岩陰から5羽のヒナがハイマツをついばみながら警戒感ゼロでチョロチョロ目の前で動き回ります。「ライチョウちゃんいいねー、夏羽ステキ♪」などと超小声でつぶやいてると→
→そのうち2羽のヒナが僕の足元付近まで来てチラチラ見てきます。「大きくなったねー、冬に備えてハイマツ食べまくりなさい」みたいな感じで暫くライチョウちゃん親子の朝ごはんの様子をじっと静かに観察するのでした。僕の画家時代の目標に、ライチョウちゃんをたくさん描くというのもありました→
→羽の構造を詳しく知るために写真集を数冊揃えて見入ったりした時期もあったほどです。結局たきざわ彰人としては3回しかライチョウちゃんを描くことが出来ませんでしたが。今回の遭遇で画家時代の夢や願望を思い出し、嬉しくもあり物悲しくもありました。冬羽のライチョウちゃんも見たいです(祈)
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