7人の中の第一人者であったステパノは、ヨハネに愛されていた。ヨハネは自分に与えられた啓示についてステパノに話して聞かせることができた。当時は、外国の言葉で話すことや、病気を癒すなどの不思議な力は、12使徒だけに与えられていた。
ステパノは聖霊のお助けによって、強烈な説得力を身につけたいと望んでいたので、ヨハネの話に熱心に聞きいっていた。ピリポやニコラスも同様であった。
ある蒸し暑い夜、彼らは一心に祈り続け、悪霊と戦いながら、聖霊を受け入れる心の準備をしていた。夜があける頃、イエスが命じた聖餐(ミサ)を行っていた。パンを割き、ぶどう酒を分かち合っていた。
彼らは手をつなぎ、テーブルを囲んでいた。深い静けさがあたりを覆った。一陣の風が部屋の中を通り過ぎるやいなや、小さな炎のようなものが空中に現れた。
ステパノ、ピリポ、ニコラスは異言(※)を語り出した。ヨハネは終始この3人に霊の光が与えられるように祈り続けていたが、突然、死人のように体を横たえ、彼の霊体の誘導によって聖霊が3人の者に訪れた。
ピリポとニコラスは、異言を語る力を与えられたが、ステパノには、更に大きな霊の光が与えられていた。彼は、直ちにそこから出掛けていくように命じられ、暗黒の中で救いを求めている者を見いだすように言われた。
まだ夜が明けたばかりなので、町の中は殆ど人影が見られず、ステパノ自身も何をしてよいのか分からなかった。町の城壁づたいに、まがりくねった道をたどって、陽が天空の真上にあがるまで休みなく歩き続けた。すると、ある一軒の金持ちの商人の所へやってきた。
この商人のことは聖書にも載っていないので、説明しておこう。彼は、12使徒をやっつけようとして、長老たちを抱き込んで扇動していた者である。彼は教会の信者が増えることを、とても恐れていた。もしかしたら自分の財産を全部取られてしまうのではないかと思っからである。
この商人の名前はギデオンと言って、それはとてもあくどい事をしていた。陰で散々悪いことをしているくせに、周囲の者や長老たちの前では、善良な聖人を装っていた。彼の妻がキリストに帰依したことを知って、ひどく怒り、信仰を続けていくならば、家から出ていくようにと脅した。
彼らのたった1人の子供が、高い熱を出し寝込んでしまったので、妻は夜も昼も子供のそばに付いて見守っていた。ちょうどステパノが聖霊を受けるために祈っていた夜のこと、ギデオンはぐでんぐでんに酔っ払って家に帰り、スラム街からいかがわしい男や女を引き連れてきた。
彼らは病気で寝ている子供の部屋の階下で、一晩中どんちゃん騒ぎをしていた。夜明けごろ、病気の子供は、大声をあげ、身を震わせながら死んでしまった。母は途方に暮れ、階下にかけおりて行き、大声で淫らな話をしている連中に向かって、止めるように言った。この上の部屋で、今、子供が死んだことを告げた。
そこにステパノが家の中に入ってきた。内面の声の命じるままに、どんちゃん騒ぎをしている部屋を通り抜けようとした。妻は、この人は夫が連れてきた人ではないことを感知したが、苦悩に満ちた妻の目には、彼が何者であるかが分からなかった。
ステパノは、厳しい声をあげ、直ちに騒ぎを止めるように命じた。そこに居合わせた者は、笑う者もなく、馬鹿話をする者もいなかった。ステパノの声が、余りにも霊力に満ちていたのでシーンとなってしまった。彼は子供が死んだことを語り、父親と仲間に、すぐ上の部屋に来るように命じた。
みんなが集まってからステパノは、妻の両手を取り、彼女に言った。「主は本当に求める者のために自分を遣わされたこと、もし彼女が心から主を信じるならば、死んだ子供を再び生き返らせるであろう」と。
「父親は泣きわめき、胸をたたきながら叫び出した。「おまえなんかに、そんなことはできっこない、オレの息子はオレから離れて行ったのだ。罰が当たったのだ」
ステパノは静かにするように命じたので、再び部屋の中はシーンと静まった。ステパノの体から、聖霊の光が放ち始め、子供の全身をスッポリと包みこんでしまった。この若者は、ゆっくりと子供の体を抱き上げ、耳元で何やらささやいた。その言葉は恐怖におののきながら見守っている者たちには聞こえなかった。
突然、子供が体を動かした。すかさずステパノが叫んだ。「主イエス・キリストの名によりて、おまえの霊が再びこの体に宿りなさい!そして、元気になりなさい!」
子供はスックと立ち上がり、ほほ笑んだ。ステパノは子供をベッドの上にねかせてから、みんなの方を向いて言った。おまえ達は、もう2度と悪いことをしないで、主イエス・キリストによる救いにあずかりなさいと。
ステパノは妻をいたわった。彼女の夫は、どうして奇跡が起こったのか知らなかったけれども、ステパノの足元にひれ伏して、彼を予言者と呼んだ。
ステパノは部屋をきれいにしてから、罪深い夫を呼び入れて言った。子供が生き返ったのは、我らの主イエス・キリストの御力によるものであると語って聞かせた。そして教会のことや、キリストの教えが多くの人々を救っていることを聞かせた。
これは、ステパノによって為された最初の奇跡である。これを目撃した者は、総て信仰を受けいれ、教会の仲間に加わり、キリストの信仰を広める熱心な働き人となった。
(※)訳者注 – 初期キリスト教において聖霊を受け法悦状態で発する意味不明の言葉による祈り。一種の霊言現象。使徒行伝2章3~4節参照。
■2022年5月11日UP■「進化が足りない」物質界の苦難の存在理由を僕は理解できていないという意味です(祈)†物質界で味わった苦しい思いは、帰幽後に霊界で存分にその埋め合わせが用意されており、苦難から逃げずに立ち向かった者には霊的褒章が、苦難から逃げて物的享楽に走った者には幽界下層界での反省の人生が待ち受けています。さらに同胞(他人)を虐げて(肉体的精神的に傷つけて)私腹を肥やした人間には暗黒、地獄とも表現できる低い境涯にて永遠とも思える長い年月にわたる大変キビシイ未来が待ち受けています…続きを読む→ ■2022年5月18日UP■「あなたは理解しなくてはなりません」何を言ってるのかサッパリ理解できません(祈)†とにかく理不尽のレベルがタダ事ではない。努力すればするほどヒドイ状況にさせられていく。どれくらいのレベルの不自由な肉体をまとわされるのかは分かりませんが、義肢、義足ですからもちろん日常生活に支障が出るレベルでしょう。当然絵も描けない、そもそも絵の才能を剥奪され、現世での努力を全く無に帰せられる。そして使命遂行上必要と思われるテキスト撃ち、情報拡散等々の作業も満足にできない、そういう肉体をまとわされての再降下になるのかも知れません…続きを読む→