—–四章3
『ベールの彼方の生活①』
【童子が手引きせん 一九一三年十月二十日 月曜日】引続きカストレル様の都市の見学旅行中の話です。中央通りを歩きながら私はなぜこの都市には方形の広場が多いのか、そしてその広い中央通りの両側にある塔のように聳える建物が―
『ベールの彼方の生活①』
―何のために建てられているのかを知りたいと思っていました。そのうち中央通りの反対側の入口に到着してやっと判ったのは、その都市全体が平地に囲まれた非常に高い台地にあるという事でした。
『ベールの彼方の生活①』
案内の方のお話によりますと、そこに設けられている塔からなるべく遠くが見渡せるようにという事と、周りの平地の遠い住民からもその塔が見えるようにという配慮があるとの事でした。そこがその界の主都で全てがそこを焦点として治められているのでした。
『ベールの彼方の生活①』
帰途も幾つかの建物を訪れ、どこでも親切なおもてなしを受けました。その都市ではカストレル様のお住まいでみかけた以外に子供の姿はあまり見かけませんでした。ですが時折そこここの広場で子供の群を見かけます。そこには噴水があり周りの池に流れ落ちて行きます。
『ベールの彼方の生活①』
池の水はその都市を流れる大きな川につながり、無数の色彩と明るい輝きを放散しながら下の平地へ滝となって落ちて行きます。その滝の流れはかなり大きな川となって平地をゆったりと流れて行きますが、その川のあちこちで子供たちが水浴びをして遊んでいるのを見かけたのです
『ベールの彼方の生活①』
しきりに自分の身体に水をかけております。私はその時はあまり深く考えなかったのですが、そのうち案内の方から、あの子供たちはあのような遊びをするよう奨励されているとの話を聞かされました。
『ベールの彼方の生活①』
と言うのは、そこの子供たちは死産児として来たので体力が乏しく、あのような遊びによって生体電気を補充し体力を増強する必要があるというのです。それを聞いて私が思わず驚きの声をあげると、その方は「でも別に何の不思議もないでしょう。―」
『ベールの彼方の生活①』
「―ご存知のように私たちの身体は肉も血もないのにこうして肉体と同じように固くて実体があります。また現在の私たちの身体が地上時代よりはるかに正確に内部の魂の程度を反映している事もご存知のはずです。その点あの子供たちの大半がやっと成長しはじめたばかりで、―」
『ベールの彼方の生活①』
「―それを促進するための身体的栄養が要るのです。別に不思議ではないと思いますが…」とおっしゃいました。別に不思議ではない―言われてみれば確かにその通りです。
『ベールの彼方の生活①』
私はさきに天界を“完成された地上のようなところ”と表現しましたが、その本当の意味が今になってようやく判ってきました。多くの人間がこちらへ来てみて地上とあまりによく似ている事に驚くはずです。もっとも、ずっと美しいですけど。
『ベールの彼方の生活①』
大抵の人間は地上とは全く異なる薄ぼんやりとした影のような世界を想像しがちですが、よく考えてごらんなさい。常識で考えてごらんなさい。そんな世界が一体何の意味がありますか。それは段階的進歩ではなく一足跳びの変化であって、それは自然の理に反します。
『ベールの彼方の生活①』
確かにこちらへ来てすぐから地上と少しは勝手が違いますが、不思議さに呆然とするほどは違わないという事です。特に地上生活でこれといって進歩のない生活を送った人間が落着く環境も地上と見分けがつかないほど物質性に富んでおります。
『ベールの彼方の生活①』
そういう人間が死んだ事に気づかない理由はそこにあります。低い界から高い界へと向上するにつれて物質性が薄れて行き、環境が崇高さを増して行きます。しかし地上性を完全に払拭した界、地上生活と全く類似性をもたない界まで到達する霊は稀です。
『ベールの彼方の生活①』
特殊な例を除いてまず居ないのではないかと思っております。が、この問題については私に断定的な事を言う資格はありません。何しろ地上生活と全く異なる界に到達していないどころか、訪れてみた事もないからです。
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