【7/9】霊界通信 イエスの少年時代 貧窮の中の小さな王者 50 地獄で仏に出逢う

イエスの体がかすかに動いた。ヘリは急いで彼のもとに走りよった。唇はどす黒く、目は窪み、頬はこけていた。低い弱々しい声がした。「僕にかまわず急いで先へ進んで下さい。僕はもう無用の重荷ですから…」

「とんでもない。わしはお前を見捨てやしないぞ。お前の額には、高貴な運命が印されているんだ。灼熱の毒蛇もお前の生命を呑み込むことはできないだろうよ。お前の体をまるめてボール玉にし、苦しみもだえているお前の魂と一緒に地獄に投げこんでしまえ!」

ヘリは立ち上り、怒りで全身を震わせ、彼の太い脚と拳(こぶし)をふり上げて、東から登ってきた太陽に向かって戦いを挑むのであった。「生ける神の御加護により、おれはこの子をお前からもぎ取ってやる!おれの頭上の冠にかけて誓ってやる!お前の禿頭(はげあたま)をひっつかんで無情の苦しみを投げとばし、炎の舌をやっつけるんだ!!」

ヘリはなにやら沢山の呪文を次から次へと口走った。言いたいだけ言ってしまうと、彼の怒りは沈まり、気分も爽快となった。でもイエスの方は身動きひとつしないで呻(うめ)きながら言った。「空が僕を押しつぶしてしまう。ヘリ、ヘリ、まわりが真暗だよ!」

ヘリは彼の弱々しい訴えにはひとことも答えず、遠くに生えている草むらの方へ歩いて行った。彼はやわらかな砂山の傾斜面にさしかかって、身ぶるいする程驚いた。よく見ると小さな足跡が残っているではないか。

風に吹きとばされる砂は、足跡を消してしまうのであるが、目の前に何と人間と駱駝(らくだ)の通った足跡がはっきりと残っているではないか。ヘリは無我夢中でその足跡を辿って進んでいった。真昼近くになって、彼は平地から盛り上っている砂利の先端が見える所に辿りついた。そのあたりから、ちらほらと草が生い茂り、土の表面が隠れていた。

焼けつくような陽光を浴びながら1時間も歩かないうちに彼の声はかすれ、遂に荒野で倒れてしまった。彼はじっとしているわけにはいかなかった。イエスの命が彼にかかっていたからである。彼の生命を救うためにはどうしても砂漠の奥地に住んでいる『流浪(さすらい)の部族』を探し出さねばならなかった。

風が一瞬やんだかと思うと、突然ある音がきこえてきた。人間ではない何ものかが、駈けずり回っていた。ヘリは草むらの中に身をひそめ、耳を大地に押しつけながら様子をうかがっていた。突然、叫び声が静けさを破った。

それは、ガゼルの一群が草むらからとび出して傾斜面を駈け降りて行き、東へ西へと散って行った。(ガゼルは、レイヨウ(かもしか)の一種で、アフリカ、西アジアに産する小形で足の早い動物 = 訳者註)

ガゼルの一群が通りすぎてから、ヘリは地面の上に大の字になった。そのとき空中に槍が飛んで行く音がきこえ、動物の体が石の上にどさっと倒れる音がした。ハンター(狩人)の叫び声がして獲物の方へとんで行った。間もなく数人の男たちが、笑ったり話し合いながらヘリのそばまでやってきた。

彼らは獲物以外には目もくれなかった。近くまでやってきたときにヘリを見て、用心深く見守っていたが、彼らは盗賊ではなく、ヘリが血まなこになって探していた友人『流浪の部族』の仲間であった。跳びあがらんばかりにうれしかった。

彼らもヘリであることがわかり、有頂天になってヘリを肩にのせ、ヘリの指図に従って死にかけていたイエスの所に運んでもらった。「早く行って下さい、イエスはもう死んでいるかもしれないが」と、ヘリは叫んだ。野性の男たちは答えた。

「わかった、わかった。おれたちは全力で走っているんだよ!」彼らは野性のガゼルのようにつっ走った。彼らには灼熱の太陽などはへいちゃらだった。疾風のようにイエスの所へ来てみると、イエスは気絶していたがまだ息をしており、彼の霊は肉体を離れていなかった。

彼らは自分たちの息子でもあるかのように優しくイエスを担(かつ)いで彼らのテントまで運びこみ、女たちに介抱させた。まる2日間苦しんだ後、安らかな眠りに入っていった。彼は遂に安らかに目を開き、薄明かりに光る砂漠のマントを見たのである。

さて『流浪の部族』はアラビヤからやってくる盗賊の群れを恐れていた。最近では、随分物持ちになっているそうである。砂漠の狼たちは、仔牛、山羊などを全部かっさらっていき、驢馬や家財道具まで持ち去っていくからであった。だからヘリが血まなこになって彷徨(さまよ)っている時期には、わざと泥棒でさえよりつかない水無し地帯を選んで生活をしていたのである。

盗賊もそんな処では渇(かわ)きのために忽ち死んでしまうことをよく知っていた。ところが、この部族は、砂漠の民として古くから暮らしているので、神からおそわった特別の知恵により、驚くべきことに、砂の中に隠されている宝物(水)を見つけることができるのであった。

水は、荒野に隠された宝物と呼ばれていた。しかも、この人々だけが水無しの土地で水を探し当てることができた。“水無しの土地”とは、アラビアの中心にあって盗賊や旅人、さらに野獣からも恐れられている名称であった。この部族だけが砂漠の知恵を持っており、そこに住むことができたのである。

部族の長(かしら)である“ハブノー”が言った。「ヘリ!本当によく来れたな!天使がお前と一緒に歩いてくれたんだよ。この夏の真昼間に、この水無しの土地へ案内できるのは、天使だけだからね」

「2度も神に仕えて働いた」これが強姦殺人魔を滅ぼすつもりがないという意味なのです(祈)†■2023年4月12日UP■
「2度も神に仕えて働いた」これが強姦殺人魔を滅ぼすつもりがないという意味なのです(祈)†
そうそう、シルバーバーチ霊は「苦を苦と思わない段階まで霊格が向上すれば、苦難を味わわされても喜びしか湧き上がってこない」みたいな事を仰っています。さらに「ベールの彼方の生活」にも、上層界の天使たちが下層界の仕事に携わって大いに苦しい状態にさせられているのに笑顔になっているという記述があります。これは帰幽して十分に向上を果たし、俯瞰の視点で全体を眺められるポジションに立つ事ができて初めて到達できる精神状態だと思います。物質界生活中にこの精神状態に到達するのは、頭で知識としては理解する事ができても心の底から納得してそういう心境に到達するのはまず不可能と思われます。中にはそういう聖者のような方もいらっしゃるのかも知れませんが僕はデザインの人間ですのでそれはないです…続きを読む→

未分類

Posted by たきざわ彰人(霊覚者)祈†