【11/17】霊界通信 イエスの弟子達 パウロ回心の前後 31 ヘロデの挫折と死

領主ヘロデの送った栄光の日々について話しておこう。ヘロデは夜中に目を覚ますと、外で動物が歩いている足音が聞こえてきた。彼は昔の楽しかった頃のことを思い出していた。

銀色のローブ(裾の長い衣服)に身を包み、ペテロを死刑にした後で、群衆の前に現れ、彼らが自分を神として拝んでいる様子を夢見ていた。

しばらくしてヘロデは1人の奴隷を呼び、部屋に明かりを持ってこさせ、祭りにでかけるための着替えをした。彼の最大の好みは、盛装することと、家来たちのお世辞を耳にすることであった。

盛装した自分の姿に灯の光が当たってキラキラと光輝いているのを見て満足した。しかし、それとはなしに目をテーブルの上においてある羊皮紙に向けてみると、驚いたことに、それが血のような色で文字が記されていた。きっと名だたる律法学者が書き記したものであろうと思い、読んでみて肝を潰した。

それには、『ヘロデよ!おまえに災いあれ!岩の間に身を隠し、砂塵の中に隠れよ!天の大神の恐怖が迫っておる。砂漠へ行け!直ちに汝の顔を覆え!神の怒りがおまえを撃ち、虫けら同然にならんうちにな!』と記されていた。

それを見たヘロデは気違いのようになり、その羊皮紙を八つ裂きにし、つばをかけ、部屋の護衛に当たっていた家来を刀で切り殺してしまった。犠牲者の血を見て彼の怒りが和らいだ。

ヘロデの世話をする家来がやってきて、歯が浮くようなお世辞をならべたて、羊皮紙のことは余り気にしないように説得した。その上ローマ皇帝よりも更に偉大な生き神様として崇められるようになる、とも言った。

夜が明けると、ヘロデは別室に行き、王の貫録を示すことができるような身支度をした。そこへ早馬が報せをもってきた。なんでも誰かが神殿の庭で、人々に演説をしているという報せであった。

神殿に集まっている連中は、ヘロデに殺されたヤコブの親戚、縁者であった。彼らは群衆に向かって、ヘロデが殺したヤコブはエフライムの息子であって、12使徒の1人ではない、従ってヘロデは罪もない人間1人を殺してしまったと言い触らしていた。

ヘロデは、おかしなことを言うものだと思っているところに、サンヒドリンの1議員である長老がやってきて、あらゆる証拠を示しながら本当のいきさつを説明した。

即ち、ヤコブはエフライムの息子であったこと、しかも12使徒のヤコブとは良く似ていたこと、それで多くの人々はだまされていたことなどを話した。ヘロデは返すことばも無く、すっかり逆上してしまい、まだ夜が明けたばかりなのに、全身から汗が吹き出していた。

さて、獄中のペテロの護衛たちは、全身が硬直したまま、主の天使が姿を消し囚人が獄から出ていくまで静止していた。目が覚め、元気を取り戻すや否や、ペテロを縛っていた鉄の鎖が切断され、土牢の中が空っぽなのに驚いた。

外を見張っていた者たちを集め、前後の事情を聞いても誰1人として見張り人の前を通り過ぎた者はいなかったこと、昨夜はみんな一睡もしないで見張っていたことを主張した。誰1人としてペテロの姿を見た者は無く、おまけに道路にはサンダルの足跡さえも見付からなかった。

いよいよペテロが死刑になる時間が迫ってきて、大勢の人々がペテロの死刑を見物しようと集まってきた。言ってみれば、死の祭典であった。ヘロデのもとに急使がやってきて、昨夜のうちに武装した天使によって囚人全部が盗まれてしまったと伝えた。様々な噂が流れ出した。ヘロデは、どうしてペテロが厳重な牢獄から逃れることができたのか、見当もつかなかった。

そこで彼は苦肉の策として、護衛どもがペテロと結託して囚人を逃がしてしまったと、言い触らした。護衛たちを人身御供にする考えであった。領主の館である宮殿の外側で大騒ぎがもち上っていた。飢えた人々が大声で叫んだ。

「ペテロを返せ!ペテロはどこにいる!天使がペテロをさらっていったというのは本当なのか!この館の中にいるのなら、おれたちに会わせろ!」

余りにも大きな騒ぎが起こったので、ヘロデの身代わりにブラストという男が護衛に囲まれながら、姿を現した。その騒ぎでヘロデは口から泡を吹きながら狂人のようになっていた。ヘロデは抜き身の剣をあたりかまわず振り回していた。

ブラストが言った。「クリスチャンどもが夜中におしかけて、護衛をやっつけてペテロをつれだしてしまったのだ」そこで群衆は、昨夜の模様を知っているクリスチャンのところに駆け付けて、事の真実をすべて耳にすることができた。

ここで大いなる奇跡が起こった。神は群衆をクリスチャンの味方にしたのである。群衆は雪崩のようにヘロデの宮殿を取り囲み、大声でののしった。「おまえは、おれたちにパンのかわりに石をくれやがった!ヘロデをここに突き出せ!」

彼らはますます激しくののしり始め、民衆をだまし続けてきたヘロデを出せ、と叫び続けた。護衛たちは暴徒と化した群衆を蹴散らそうとした。流血、喧噪(けんそう)、怒号が渦巻き、まさに修羅場となった。このようにして、ヘロデが夢見ていた栄光の日は終わった。

ヘロデは、その日から病人のように寝込んでしまった。ブラスト以外とは誰とも口をきかなかった。怒りと恥とがまざりあった感情に抗しきれず、また、民衆が自分についてこんなにもひどく思っていたことを知って非常に驚いた。彼の心にはいつも神になりたいという御しがたい欲望があった。

ただ神として崇められ、拝まれるだけでよいと願っていたのである。そのような虚栄の虫がヘロデの魂を蝕んでいたので、昼も夜も休まることがなかった。そこでヘロデは領主としての権力を悪用して、無数に残酷なことを行った。

ツロとシドンの民衆に対しては多額の税金を収めないなら皆殺しにしてやると脅し、不作の年であったにも拘わらず食糧を全部巻き上げてしまうのであった。そこで大いに苦しんだ民衆は、ブラストを買収して領主の怒りを和らげるよう懇願するのであった。

買収されたブラストは、ヘロデの弱点をよく知っていたので、一計を案じてヘロデに言った。

「我が主よ、民衆は何といっても、あなた様を神であると言ってます。私もそう信じています。そこで、近日中にローマ皇帝カイザルの名誉を称える集会が予定されておりますので、その時に、神である貴方様が、立派な銀のローブをお召しになって劇場の高座にお座りになれば、民衆は堂々たる貴方様を見て、カイザルのことなんか忘れてしまい、貴方様を神として崇めることでしょう」

ヘロデは彼の甘言を耳にして大変喜んだ。特にカイザルが卑しめられて自分が崇められることを思ってみただけでもゾクゾクとして落ち着かなかった。

よいよ集会の日がやってきた。ヘロデは、泡を吹きながら卒倒した忌まわしい日以来着なかった銀の衣服を身に纏った。今日こそは、自分が大神の子孫であるメシヤたることを示せると思った。劇場内には多くの異邦人もいた。

ローマ人の国籍を持つ者や、様々な国からやってきた人々がいて、色々な国ことばがとびかい、ヘロデの入場を待っていた。又カイザルの名代も入場することになっていた。ブラストは数百人の者を買収して、ヘロデが入場したら、神として崇め、地上にひれ伏し拝むように言い付けておいた。

いよいよ領主へロデが民衆の前に姿を現し、彼の右の手を民衆に向かって差し延べながら高座に座った時、大きな叫び声がもちあがった。「ヘロデ王、万歳!ヘロデ王、万歳!おお、聖なるお方、あなたこそ私達の神であらせられます。私達の感謝と尊敬を心からお捧げいたします」

異邦人以外の人々が顔を輝かせて同じように叫んだ。ブラストに買収されていなかった人々も大声につられて、彼を神だと思うようになった。太陽の光線が銀の衣服に反射して、ヘロデの身辺を輝かせていたことも大いに効果があった。

このような言語道断な冒涜(ぼうとく)が堂々と展開されていた時、突然、天罰が下った。彼の全身はワナワナと震え出し、色あせ、顔は紫色に変わり、後方にいたブラストの腕の中に卒倒し、あえなく息を引き取ってしまった。

ヘロデの死は、代々にわたって、自分を神とした者の最期を示す象徴として語り継がれていった。これによって人々は、肉体は土に帰るものであり、霊魂は天使の導きによって新しい生活に入って行くこと、しかも、霊が清らかであれば、神のところまで行けることを学んだのである。

「しかしこの応援団」心秘かに使命遂行を応援して下さっている方々の思念だと信じたいですが(祈)†■2022年7月13日UP■
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「全目標達成」霊界から見るとそう見えるようですが肉眼には全くそうは見えません(祈)†■2022年7月27日UP■
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Posted by たきざわ彰人(霊覚者)祈†